めいん
6
「ぎゃあっ!」
「うっ、」
「わわわぁっ!」
「おっ、と」
『むぎゅっ』
さすがに、20階から飛び降りるとなると全員の脳裏に一瞬だけ絶望が過る。
しかし、運がよかったのか悪かったのかは判断しがたいが、見事に落ちたのは深い場所の海。
打ち身などはあったものの、皆無事に海面へと突っ込んでいった。
そこまでは、何の問題もない。
「せ、船長!!!」
「しまった、ロー!」
ペンギンとキャスケットは巻き足でなんとか水面に浮かんだものの、肝心のローとアイリ、それから何故かベポまで上がってこないのだ。
これにはさすがに危機感を覚え、潜りにいこうと互いに頷きあう。
しかし大きく息を吸い込んだ刹那。
海面が、大きく揺れた。
「、アイリ」
驚きにキャスケットが声をあげた。
銀色の艶やかな月光に照らし出されたのは、まごうことなき美しい銀髪の少女。
その細腕に抱かれたるは、我らがハートの海賊団船長なる人間。
『……、…、………、……』
声を出すことのできない彼女は小さく微笑んだ。
それからその薄い唇だけを小さく動かしてみせた。
『だ い じ ょ う ぶ 』
気づけば小脇にベポと思わしき毛玉も浮いているのだから、安堵に力が抜けた。
「あー、マジあせった。能力者2人そろって水死体になったかと思ったろ」
「同意だ。船へ帰るぞ。夜の海は冷える」
ローは気を失っているのか、じっと目を閉じたまま2人に応答しない。
心なしか、いつもより一層顔色が悪いように見える。
少しばかりか不審に思い、ペンギンは暗闇の中でローへと視線を向ける。
そしてようやく気付いた。
海の中をたゆたう、彼から流れ出す多量の血に。
「まずい、このままじゃ危険だ」
「き、キャプテン真っ青だよ!」
ベポは意識を取り戻したのか、慌ててローの顔色を伺う。
全員、早く泳ごうと善処するものの人間の脚力ではたかがしれている。
『 つ か ま っ て 』
不意に、彼女の唇がそう告げた。
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