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めいん














ペンギンは長い間ぶつぶつと譫言を繰り返していたが、落ち着いたのか、いつもの冷静沈着な彼に戻っていた。



血が付着した防寒帽を拾い上げる。

ばたぱたと何度か軽く埃を落としてから被ればもういつもどおり。



ペンギンは、未だに死体を解剖中のキャスケットに近寄る。


キャスケットはただ辛辣な言葉を並べたてながら原型を留めていないそれにひたすら刃を突き刺していた。



「キャスケット」



ペンギンに、牙が剥かれた。


背後から、その華奢な肩に手を置かれたキャスケットは手元のカトラスを振り抜いた。



豹のようにしなやかで、鷹のように強かな峻烈なものだった。



しかし、キャスケットの炯々とした眼光が微動だにしないペンギンを捉えると、刃先は彼の首を飛ばすすんでで止まった。



「あ、ぇ?、っえ?」

「もう止めろ、終わったんだ」

「おわり?」

「あぁ」

「おわりだから、もうなにもしなくていいのか?」

「あぁ」



ペンギンが再度頷くと、キャスケットは眉を下げて小さく呟いた。


「つまんない」と。
彼がそう吹聴したのをアイリは決して聞き逃さなかった。



真っ赤なベポはすでに床に大の字に仰臥して鼾をかいていた。



疲れたのか反動なのかは定かでないが、正気にさせる手がかからないのは救いだった。


「ぅお、ちょ、おれ勃ってきた」

「何言ってるんだバカケット」

「バカケット言うなし、文句あんのかこらー」




冗談めかしに笑うキャスケットと、呆れるペンギン。寝ているベポ。



まるで、何事もなかったみたい。





















 

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