めいん
1
「さてと、……いて」
3人の戦いを吟味したのか飽いたのか、ローは傷などには見向きもせずに立ち上がった。
アイリは驚きつつも、冷静に彼を安静させようとする。
しかし彼女の言葉も、命令するな、の一言で片付けられてしまった。
『どこ行くの』
「探し物を探すだけだ」
『金庫?』
「金になんざ困ってねえよ」
『確か金庫は突き当たりを行って右に、』
「人の話を聞け」
苦笑したローに、少し強めに頭を小突かれる。
アイリはもう止めはしなかったが不安に眉を下げて彼を見つめた。
やがて彼は、思い出したと言わんばかりに付け加え、彼女の前に手の平を突きつけた。
「お前はついてくるんじゃねえぞ」
『えっ、?』
三半規管を揺らし、嫌に響いたその言葉。
腹がズキズキと痛む、目の前が霞む頭がぐらぐらする。
それに加え、あまりに強く殴られたため痛みが麻痺していた腹部。今になって吐き気がこみ上げてくる。
「休んでろ、いいな?横になればかなり楽になる。
打撲症でなく、腹膜炎を起こしているなら全治1ヶ月の手術だぞ。
痕は残らないようにつとめるが」
『な、んで?』
「顔色見りゃ分かる。おれを誰だと思ってる」
悪名高き、死の外科医だぞ。
彼が笑みを浮かべ、背を向けた。
それを合図にアイリは床に倒れる。
(追わなきゃ、止めなきゃ)
そこで彼女の意識は途切れ
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