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めいん




















(この男、な゛、んという覇気、だ。からだ、がッ動かな、い)



女はローに殴られて床に伏したまま胸中で叫んだ。



身体中から、嫌な汗がじとりと吹き出す。



しかし起き上がらねばただ殺されるだけ。

呼吸をすることすら困難になる彼の凄まじい覇気に耐えながら、身体を起こすことに専念する。



「ククッ……―もう、寝んねの時間は終わりか?」

「あ゛、ァっ!?」



先ほど、女がアイリにやった通りにローは這いつくばるその手を踏みつける。



ご丁寧にヒールで抉るように力をこめれば、耳に悲痛な叫びが届く。



それが、楽しくて楽しくて。
つい一気に力を入れてしまって。



骨が折れた。



「あ゛、ぁっ!
手が……手がぁあ゛っ!!!!!」

「あーぁ、やっちまった。
もう少し痛め付けるつもりだったんだけどな。仕方ねぇか」


彼の、心底残念そうな声。



まるで、酒に酔っているかのように舌ったらずな口調。



女は素直に、彼に対して恐怖を感じた。



しかし、ローはと言えば先ほどから動かなくなった女を疑問視していた。



それは、女とっては動けないのだが。ローは覇気についての自覚はないらしい。



動かないことに不満を持ったのか今度は、不機嫌そうに女の腿を持ち上げる。

短く、驚愕の悲鳴をあげたもののそれはすぐに絶叫に変わった。



本来、人体の構造として曲げてはいけない方向に曲げたから。



「※※※※※、☆★☆★☆!!!!!!」



聞くに耐えられぬ叫声が、四方のコンクリートの壁を揺らした。



少しずつ、ギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリ引っ張れば骨が折れた。


また少しずつギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリ引っ張れば、




あしがとれた。



陳腐でチープな音を立てて、付け根から脚が独立を宣言する。



絶叫、絶叫絶叫絶叫絶叫。



そして、女は軍人として恥ずべき、生き延びるための懇願。

――命乞いをした。



ローの足にすがりつき、涙がらに言葉を紡ぐ。



彼は靴先に転がるソレを静かな眼で見つめた。



「な、んでも、する゛っ……!!!
欲しいものもやる何でも望みを聞くお前の“ハート”に誓う!だから、!!!」



しにたくない。



「ハート……か。
確かに、おれの仲間たちは各々の心臓に何かを誓っている。だがな、」




おれの“ハート”は傷つける方なんでな。



彼の返答は残酷だった。














 

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あきゅろす。
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