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めいん






















何かをする気が起きない。



身体を起こすことも悪態を吐くことも表情を変えることも喋ることも動くことも息をすることも。



彼の全身をひたすら蝕むのは、激しい虚無感のみだった。



(おれは、お前の危機にも気づかなかった)



船長失格だな。
自分を叱咤して、嘲笑した。



ローは麻痺した脳内でぼんやりと思考を巡らせる。



彼の身体はもう、血を流しすぎたのか海水のせいかは定かではないが、本人の意思に沿って動かなくなっていた。



冷たいコンクリートの床に敵が目前にいることも関係なく寝そべる。

女はそんな彼を嘲笑った。



「2億の首が、1人の女に惚れ込んで死ぬなどとは。
堕ちたものだな……死の外科医」



死の外科医。



それはまごうことなきローの通り名であり、彼と常に隣接している言葉。



今まで無反応だったローが、指先だけであるが僅かに反応した。



(死の外科医、か)



「ククッ……」


幸を切り裂き
不吉を縫い合わせ
患者は決して逃さない。



「ふふ、ふふふ……ひ、ひゃっ、はっははははははあっはっははははーーー!はははははははははははは!!!ーー!」



たしかに、おれがこんなのなんて、らしくねぇなぁ。



女は、突然悲鳴にも似た笑い声をあげるローにたじろいだ。


そして彼は「っと、」



ずぶずぶぞぶり。


立ち上がった。

無論、立ち上がろうとするほど刺さったままの太刀は更にその腕を切り裂く。



女は愕然とした表情のまま硬直していた。



きっと左腕はしばらく使えないであろうことは容易に想像できる。



しかしローは苦悶の表情1つ浮かべることない。



彼に対する恐怖と驚愕ので身体が硬化している女の頬を、微塵たりとも容赦せず殴る。



ゴン、だなんて生易しい音じゃない。



肉を抉り、骨と骨同士がぶつかりあう不協和音。



(さて、どうやって殺すか)



そんなローの顔に貼り付いているのは笑み。



清々しすぎて、不気味なくらいの笑顔だった……――。









 

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あきゅろす。
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