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めいん










月明かり差し込む、無気色一面の薄暗い牢。


明かりなどついていないため、辺りは目をこらさねば何も見えない。



本来であればそのはずだ。

しかし、牢全体は何故か明るくて所々に電気がついていた。



よく見れば電気ではない。

金属同士が激しくぶつかりあう時に生じる、火花だ。



「死、ね!!!!!」

「お前がな」



ガキン ガィン ギンギン。

ぎゃらぎゃらがりがり と、不愉快極まりない音を立てる。



互いの刃を交える度に。



女は幾分か、男であるローより体格がいい。彼が細すぎるというのは置いておく。



彼女の太刀がコンクリートをえぐった所を見るとそれはかなりの重さであると推測できた。



女は重いはずの太刀を自由自在に振り回し、ついでに小回りまで利かせている。



ローはなるべく、ダメージを最小限に抑えるべく刃先を斜めにして受け堪えるものの大分押し負けていた。



(さすが海軍少将って所か。
刀が折れそうだ……っ!)


ローの頬に一筋の汗が滲んだ。



一度後退して、間合いをとって様子を伺う。



しかし、あることに気がついた。

確かに先ほどまでそこにいたはずの愛しい存在が、いない。



「、アイリ?」



目の前が白黒になった。



時が止まったかと思った。



「さらばだ、トラファルガー」



ようやく聞き取れたのは女の声と嫌な音。



ぞぶり。
自分の肉が裂ける音。



(アイリ)



女の太刀は、確実に彼の腕を貫いた。


急所を外したことに苛立ったのか女は舌打ちをしたが、そのまま動かないローに嘲笑した。



壁に叩きつけても無反応。



貫かれただらりと下がった腕と共に、彼の思考も鈍った。



「気づかなかったのか?間抜けな奴め。

お前がこちらに意識を奪われている際にNo.119は回収した」



女が何かを言っているのは聞こえた。

女が何を言っているのか聞こえない。



目の前に広がるモノクロの世界に吐き気がした。




(アイリが無事なら良いが)






















 

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あきゅろす。
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