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めいん















(あの女、ムカつく)



アイリを殴りやがったアイリを踏みやがったアイリを泣かせやがったアイリを怖がらせやがったアイリをアイリをアイリを、



アイツはおれの所有物なのに、彼女に何かして良いのはおれだけの特権。
なのに勝手に手ぇ出しやがって。



とりあえず、死ねばいい。




窓から差し込む、青みがかった月光がやけに心地よい。


ひやりとした空気。
ついでにおれの頭も冷やしてくれてるみたいだ。



引きつった笑みを浮かべている女がアイリを指差して口を開く。

軽々しく指差してんじゃねぇ。殺すぞ。



「正義の名においてNo.119は返してもらう。
そして貴様は殺す」

「ほざいてろ。
そのうるせぇ口と一緒に人生シャットアウトさせてやる」



すでに赫怒している女に向かって中指を立て向ける。


一々真っ赤になって反応するものだから、からかい甲斐がある。



アイリを、巻き込んでしまわないように隅に座らせる。



大丈夫。
お前は傷つけさせやしない。



しかし彼女はそんなおれの心境を知らない。

ただ、小さく『ロー、血、が……』と震えた声で呟いた。



その言葉に見れば、切り口からどっと血が溢れている。



あぁそうか。
そこでようやく、おれは斬られたということを自覚した。

どうりで肩が熱いと思った。だが、そんなことは気にしない。



これくらいの痛みが、おれを正気にさせる。



そう言っても、現在勝算は少ない。
負ける気は皆無だが。



アイリに押し倒された時に被った海水が、まだ乾いていない。



服にじっとりと染み込んだ水分はそう短時間で乾くものではない。



まだ半分力がでない。
畜生、ドライヤーをくれ。

そうしたらこんな奴、一瞬でシャンブルズしてやれるのに。




少しだけピンチかもしれねぇ。


少しだけ、な。





















 

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あきゅろす。
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