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めいん
10










「おれに雑魚任せて突っ走って行きやがって……後で覚えておけよ」




彼が、大仰に慨嘆する。


それから、倒れているアイリの側に歩みよるとその身体を抱え、立たせてやる。



服の埃をある程度はたき落としてやり、くしゃりと頭を撫でる。

折れた手を労るように、慈しむように撫でてから「後で手当てしてやる」と優しく囁く。



その間、少将と呼ばれた女に彼は一瞥すら投げなかった。


まるでそこにある壁と、女が同化しているかのように。




「貴様、2億のトラファルガー・ローだな」

「ボロボロじゃねぇか。ったく、おら涙拭け」



女に対して、愚弄ととれる行為をするローにアイリは愕然とした眼差しを向ける。



しかし、やはりローはアイリの涙をそっと拭ってやっただけで女など気にも止めていない。



ことごとく存在を否認された女の額に、くっきりと青筋が立つ。


頬の筋肉は完全にひきつり、鬼でさえ後退りしそうなほど恐ろしい形相を浮かべる。



ツカツカと、ヒールを高らかに鳴らせて彼に歩みよると、叫んだ。



「そんなに死にたいなら、望み通り、殺してやる!!」



女は背中にある、身の丈よりも更に大きな太刀を抜き、渾身の力で降り下ろした。


彼は、避ける動作すら見せない。



『ロー!?』



ざくり。
アイリが彼の腕の中で聞いたのは、肉が裂ける音。

見えたのは、赤い赤い血。



斬られたのは、まごうことなきロー本人。



しかして彼は、肩からおびただしい量の血を流しながらもいつも通りに笑う。




「あぁ、悪ぃ……。
今、全身の血管がブチ切れそうでよ。少し抜いてくれて助かったぜ」



ゆらりと立ち上がる彼を見てアイリは素直に、そこの女の存在以上の恐怖を覚えた。



(このこわいひとは、だれ?)
























 

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