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めいん















(帰ら帰らな帰らなきゃ。)



彼女の脳内に響き渡るはその言葉だけ。


めまぐるしく、めまぐるしく。
まるで他の思考回路なぞ遮断されたように。



『ハァ、ハァっ!』



追ってくるローも、斬りかかってくる海兵も眼中に入れない。

息が切れるのも気にせずに足がもげるかと錯覚するくらいに走る。



だって、早く行かなきゃ怒られるから。



最上階。
辿り着いたのは暗い暗い牢と情報管理室。



彼女がいたのであろうこの場所は、人間を収容するものとは思えない。



まるで、家畜小屋。



『間に、合っ、た?』


小さく首を傾げ、誰かに答えを求める訳でもなく呟く。自問自答。



『そうだよ、間に合ったんだ。
わたしは、………怒られなくていいんだ。怒られなくてい「間に合うもなにもあるものか」






怖い人の声がした。



その方向……ちょうど真後ろ、ドアのあたり視線を合わせるために彼女が振り向いた。


途端に、何の予兆もなく殴られて吹っ飛んだ。
受け身もとれず、倒れてしまう。



ゆっくりとアイリの目に映ったのは恐怖の塊以外の何者でもなかった。



『……し、少将…』

「奴隷風情が。いちいち私に手間を取らせるな」



アイリの傍に立っていたのは、若い女。

その女は彼女に侮蔑の眼差しを向けてから思い切り、



『うぁっ、あ゛!!』



床に伏せた彼女のその小さな手を容赦無く踏みつけた。



そのまま踏みにじるように力を加えれば、ゴキリという鋭い音が次いで聞こえた。



それは骨が折れる音でした。



痛みと恐怖に涙を流し、床に転がったまま彼女は呟いた。






「ぃた、ぃ……ヤダ、いたいの、やだよぉ』



『だれ、か、』



助けて。



最後のセリフは胸中だけで。



「誰か、じゃねぇだろ。
アイリ、……お前が呼ぶべき名前を、もう忘れやがったのか?」




暗い暗い、怖い牢に射し込んできたのは、アイリにとって唯一の光だった。




(ごめんね、ちょっと見落としてた)









 

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あきゅろす。
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