めいん
6
月下、2人は既に駐屯所の中に侵入していた。
気配と共に身を隠しながら慎重に互いの目的を遂行するために進む。
『わたしは……、暇潰しに海兵でも殺しにきた』
「今、だいぶ中略しただろう」
『ローだって何か隠してる』
「気のせいだな」
カラカラと笑って彼が言えばアイリはすかさずその脛を蹴りあげる。
ローは小さく息を飲んでから彼女をギロリと睨む。
彼女はもちろん知らんふり。
(ローがいなかったのがムカついたから腹いせに殺しに回った、だなんて言えない)
(アイリの存在が、例え資料だろうとおれの船以外に残るのがムカついたから、なんて言えねぇ)
まるでただの騙しあいのよう。
『さっきの奴は、いきなり押し倒されたから水中を生きたまま引きずり回してやった』
けろりと。むしろ清々しささえ感じられるくらいに澄まし顔で述べる。
それを見てローは、喉の奥でくつりと笑う。
「クク、押し倒されただけで殺すとはな。
随分とわりに合わねぇな?」
『自業自得』
返ってきたのは随分残酷な言葉だった。
しかしローもそんな台詞に驚くほど出来た人間ではない。
相も変わらず、人を喰ったみたいな笑みを悠々と浮かべるだけ。
どちらも大概、オカシイ。
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