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めいん












『っ……!―――!!!!!』



月よりも美しく輝く、透き通った瞳。

さらさらと長い絹のターバンを垂らしたような銀髪。

白く抜けるような肌は、早朝の搾りたてのミルクのようになめらか。

その容姿は幼くして、この世に2人とこんな美しさを持った人間はいないであろう、鳥肌が立つほどの美貌。



間違いなくアイリだった。



『―っ、―、――!!』


「………聞こえ、ねぇよ」



呂律が回らない口で答えても彼女はただ無言で強く、彼の胸板を叩いた。



しかしふ、とローは彼女の異変に気づく。



こんなに涙を流しているのに嗚咽ひとつ聞こえない。


彼女の唇は言葉を紡ごうとしているのに、音として伝わってこないのだ。まさか、



「まさか、声が出せねぇのか?」



こくり。
小さく頷く、肯定。




彼は渾身の力を振り絞って震えている彼女の細い肩をつかんだ。


彼女は驚いたように目を見開いてローを見つめた。


「誰に、っやられ、た?」

『――、』



その台詞に彼女はますます目を丸くしてみせた。


しかし、アイリを突き刺す鉄の芯のように真っ直ぐな視線。



その瞳に燃えるは、赫怒と焦燥と彼女への慈愛。



アイリはそんなローの心象を悟って、柔らかく微笑んで見せてから、海から上がり砂浜に座る。



すると、そこには人間の姿をしたアイリがいた。



『わたしの能力。
ヒトヒトの実、モデルマーメイド。

この世で唯一、海に愛された能力者。
だけど人魚のときは対価として言葉を話せなくなる』



アイリの言葉に、自分の心配が杞憂だったことを知り、ローは苦々しく言った。



「そりゃ便利なことで」

『ふざけるな』

「いてぇよ」



おどけたように笑ってみせれば脇腹を容赦無く蹴られる。



彼女はやはり、その美しい瞳から涙を流していた。



その姿はなんとも背徳的で。


これをみたローは、神の逆鱗に遭うのではないかと思わず錯覚した。




















 

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