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話を聞け!

「ギャハハ、俺昔見たことあんべ。キテ○ツのベン○ウさん。おもしれぇ、ユーそれコスプレしてる系?」
 チャラ男会計、槙島(まきしま)がいった。生徒会だけあって顔はいいが、話し方がめっちゃうざったい。
「ねぇ鮫ちゃん、あぁいうチャラ男って放映率高そうだよね」
「お茶の間の苦笑いを誘えるんじゃねぇか」
 生徒会で突っ込まなかったのは、副会長と庶務の無口ワンコこと犬養(いぬかい)くらいだ。話の流れに寄ると、副会長はこれ以前にツッコミ済みらしいが。
 生徒会の皆さまが突っ込んだ後にツッコミを入れようという、将来有望な芸人級のやつはいなかった。
 さぁどこからドッキリカメラが出てくるのか。
「黙って聞いてりゃ、お前らサイテーだな! 人を見かけで判断するなよ!」
 転入生が叫んだ。食堂に響き渡るほどの音量だ。なるほど、まだドッキリは続くらしい。
「あれ、どう反応したらおもしろいかな。人は見かけが9割なんだよ! とかどうかな」
「ありきたり。わざわざ放映するレベルじゃねぇな」
「むぅ。ツッコミって難しい」
 転入生はさらにヒートアップしていく。
「だいたいいきなり失礼じゃないか! 名乗りもしないで人を馬鹿にしやがって!」
 食ってかかる転入生を、後ろのか○さんす○さんもとい、楠原と紺野が止めようとする。おや、と思う。ドッキリなのに止めるの?
「ふん、俺は新庄黎一郎だ。新庄さまと呼べ」
「は!? お前何様だよ! 俺は石垣一意(いしがきいちい)。一意でいいぜ。お前のことは黎一郎でいいだろ」
 あんな威圧感たっぷりのひと相手に、よくまぁ呼び捨てができるもんだ。僕なら「はい、新庄さま」と言いつつ、内心「バカ殿のおなぁりぃ」と思うに違いない。
「はっ、俺を呼び捨てか? 変わった奴だな。ベッドでも変わったことをしてくれそうだな。今晩、相手してやるよ」
 会長がにや、と笑って顎を掴んだ。大変会長! 全国ネットで男と寝てることカミングアウトしちゃってますよ!
 思わずきょろきょろとカメラを探してしまった。そのとき。
「ざっけんな!」
 転入生の叫び声の後、会長が尻餅をついていた。
「誰がお前なんかと寝るか!」
 踏ん反り返り、たんかをきる転入生。どうやら、転入生が会長の腹にワンパンしたらしい。周囲がさすがに悲鳴を上げた。それなのに。
「はっはっはっ、おもしれぇ! 気に入ったぜ一意! お前を俺のものにしてやるよ」
 大変楽しそうな会長。え。いいの。会長のおうちの人とか、取引先の人とか見ちゃうよ。カミングアウト後、殴られて喜んじゃうアブノーマルな姿。
「誰がお前のものなんかに」
「ねぇ一意ぃ。僕は和久津実」
「僕は和久津豊」
 言葉を遮ったのは、和久津兄弟だった。


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