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御山蔵学園

 少々大袈裟に表現させていただいた。何せ、ここはサッカーの試合でいうなら、日本代表がゴールを決めた瞬間と同じくらいの盛り上がりどころなのだから。
 カツラの下から現れた金色の柔らかな髪、守ってあげたくなるような美少女じみた容貌。
 よし、まさに王道!
「見覚えがあるな。確か、……ベラドンナの」
「総長してたよ。驚いたな、俺のところみたいなちっちゃいチームを、関東最大の総長が知ってるとは思ってもみなかった」
 実際のところ、知ってたのは藤宮で、その藤宮にしてもチームそのものを知っていたわけではなく、腐男子目線の腐ったランキングにより白銀のみを知ったわけなのだが。
 しかし。おかしいな。いつから俺のところが関東最大になったんだ。鬼澤のところの「セイレーン」とか、吉宗のところの「曝焔」とかの方が規模がデカイはずだ。
「あの鬼瓦みたいな「セイレーン」の総長とか、本当に人斬ったんじゃねぇかってくらい怖ぇ「曝焔」の総長を手の平で転がしてるってんだからマジすごいよな、あんた」
 何の話だ、と全力で聞きたい。奴らとはそこそこ親しくしているが、あんな我の強い傲慢な奴らを傘下にするなんて、そんな面倒なこと誰がするものか。
「あー、ぅおっほん。会長ぉ、それについてはまたいずれということにしてぇ」
「そうそう、鬼澤とか吉宗とかどうでもいいからさ」
「オリビア、総長だった、過去形。なぜ?」
 逸れた話を、腐男子ーズの3人が元に戻す。そうだ。突っ込むと何か出てきそうな話題はやめよう。今は萌えの最高潮なのだから。
「……ベラドンナは解散した。仲間は納得してないけど。でも、あんないい奴らを俺なんかの都合で引っ張り回すなんてできねぇよ」
 自嘲する白銀。
 こ、これは。
 すかさず皆の視線が交錯する。
 これは、悲劇のヒロイン系王道主人公だ!
 白銀オリビア、みなまで言うな。もうわかった。お前は両親から否定され、兄弟の誰だかが死んだんだろう。そこで親から「お前が死ねば良かったのに」的なことを言われ、絶望して夜の町に出たわけだ。その時出会ったのがベラドンナの仲間とか保護者的な人で、最近その誰だかが死んだ。もう俺なんかどうだっていい、仲間にはもう死んで欲しくない、俺なんかどこかへいけばいい、そういうわけだな!
 腐仲間と交わした視線は、真剣な顔のなかで、唯一そこのみ緩みきっていた。

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