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指先まで染まって《Severus》
「スネイプ先生って、凄い匂いがするんですね。」

その言葉に羊皮紙に向かい、採点に精を出していたスネイプの手が止まる。
生徒の大半からは畏怖されている筈のスネイプに、名前はあろうことか後ろから抱きつく様な格好の儘、鼻をヒクつかせている。



「……貴様は我が輩の邪魔をするに飽きたらず、そんな戯言を吐くとは……Ms.苗字。気に入らなければ出ていくが良かろう…。」

「全然、良い匂いだと思います。…なんだか心が落ち着きますね〜」


ニコニコとスネイプの睨みをモノともせず未だ嗅いでいる名前に、スネイプは半ば諦めの意味も込めて盛大な溜め息をついた。




──いつからだろう。
何故、この生徒だけは
我が輩を恐れないのだろう──…
いつだったか一度、訊いた事があった



……何故我が輩に付き纏うのか


我が輩でなくとも、恐らく相手には
不自由しない容姿だろうに…


すると名前は、スネイプの目をしっかりと捕らえて、云った。



「一途な所が、好きです。先生」



まだ入学して幾許の月日も経っていないというのに
一体、何を知っているというのか…



しかし、スネイプはそれ以上何も訊けなかった。

その間も名前の瞳は揺らぐ事無くスネイプを捕らえていて──



まるでそれは、心を読まれている様な気がしてスネイプは名前から目を反らした。






───不思議な女───…




それからというもの名前は、何かとスネイプの自室である地下室に立ち寄る様に成った。


当たり前のようにソファに座り、持参したクッキーを食べたりレポートを片付けたりしている。
放っておけば、その儘ソファで寝ているものだからスネイプはその度に名前を起こすはめになる。


レポートの採点が終わり、名前を目で探すと、又ソファに横に成って寝ていた。

最近ではスネイプが相手にしなくなれば、気付くとこうやって寝ている…





「…置きたまえ。Ms.苗字。減点しますぞ。」


減点という言葉に微かに反応を示したが、再び静かな寝息を立て始めた。



「…んせ……セ‥ブ……せ……ん、せ…」



寝言。

一体何の夢を見ているのか…


全く、いつからこんなに生徒に対して甘くなったのだろうか…
苗字名前という女性に逢ったことによって
スネイプは段々変わっていった。





だが、それは名前一人に対してのみ


時折、何もかもを知った様な口振りで話し出す時もあれば
急に年相応のおどけた振りをすることもある。




どれが本当なのか解らない。

だが、
確実にスネイプの中で名前の存在は大きくなりつつある。


この感情が何なのか解らない。が、知らない方が良いのだろう。




スネイプが杖を一振りした。


すると空中から温かそうな布が舞い降り、名前の体を包み込む。

スネイプは己の行為に自嘲し、明日の授業の下準備をし始めた。




名前は気付かれない様に薄く目を開き、てきぱきと準備をするスネイプを見ては、幸せそうに目を細めて



眠った





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