雪【レムシグ・甘】
降り積もる雪。
僕は何となく嬉しくて外に出た。
誰もいない夜の見慣れた景色、歩き慣れた道。
それがもっともっと僕を喜ばした。
「寒い〜…」
青い髪に積もる雪。
オッドアイに移る白。
明日には積もるかな、なんて考えながら町を歩く―――――
しかし、雪は僕を喜ばせるだけではなく、残念な事態も一緒に降ってきた。
つるっ
ずでん!!
「っ…痛い…」
滑るコンクリートの上で転んでしまった。
ついでに足を捻ってしまったらしい。これでは家に帰れない。
ふと、周りを確認すると近くの空き家があった。痛みが治まるまでそこで一休みしよう。そう思い、足を引きずりながら空き家に向かった。
中は暗く、うっすら目が効く程度だ。見渡せば小さな机、小さな椅子、小さなベットがあった。
どれも少しボロボロではあったが、使えなくは無かった。
とりあえず、寒さを和らげる為にベットにあった毛布を体にくるまり、椅子に腰かけた。
「…どうしよう」
途方も無い不安にかられ、落ち着かない。
まだまだ、誰もいない雪の夜は続くだろう。明日には誰か通る、そうは思うがこんなところで一夜過ごせば眠気も襲う。そうなれば凍死してしまう。
不安が不安を呼び、止まらなくなる。
ドク ドクン
ドクン ドク
「 」
「!」
微かに外から声がした。
人だ!聞き取れはしなかったが、何か言葉だった。
「……ぅ……つ…てき……さ…」
どうやら、この小屋に近づい来ているようだ。
「人…」
ガタンッ!!
大きな音を響かせながら「人」は入ってきた。
「さ、寒い〜」
「!?」
聞き覚えのある声、見覚えのあるトンガリ帽子のシルエット。
「…レムレス?」
「え?人?ていうか、今の声シグ?」
どうやら、レムレスのようだ。一瞬にしてこの小屋の中を甘い匂いでいっぱいにさせる。こんな事出来るのはシグの知っている中では彼だけだ。
レムレスはシグが居る机の方に近づいた。そして、冷えきった手でシグの顔に触れ、確認をとる。
「…〜冷たい」
「あぁ、ごめんごめん、手袋外して無かった」
そう言って手袋外して、もう一度シグの顔に手をやった。
「シグのほっぺも冷たいね」
「今入って来たばっかりだから」
「そっか」
レムレスはにぃ〜と笑って…
「………なにしてんの〜」
「ぎゅ〜っっってしてるんだよ〜」
毛布の上からシグを抱き締めた。シグはちょっとうっとおしそうにしながら、その温かさに安心を覚えていた。
「シグ、あったかい?」
レムレスは覗き込むようにシグの顔を見た。
「…………うん」
体の体温と顔の温度が少し上がる。
レムレスがいればあったかくなる。
甘い匂いと一緒に安心をくれる。
「レムレス、 だょ…」
ボソッとレムレスに埋もれながらくぐもった声で言った。
「ん?何?今なんて言ったの?」
「……わかってるくせに…」
シグは顔を余計に赤くして、レムレスの胸に押しつける様に顔を隠した。
レムレスはそれを見てまた、にっこり笑った。
「シグ、僕も
大好きだよ」
降り積もる雪の日。
二人は気付かなかった今日と言う日。
特別なバレンタインの夜。
FIN
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