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3


勢い良く投げたボールは25Μ地点まで


『ポトッ』


届くはずもなく



「13Μー」


そう広いグラウンドに野球部員の声が響く


(そんなに上手くいかない、か…)


はぁ、とため息をつくと山本が視界に入った



山本がいるのは20M地点らへんで、うちの視線に気付いたのか目があった



"頑張れ!"

そう言っているかのように笑顔で、手をぶんぶん振っている



"うん!"と、返事をするかのように大きく頷くと、より輝いた笑顔になる山本




(よし、頑張ろ!)



「ボールくださいっ!」


そう言うと、野球部員がうちに投げてくれた



が、ボールはうちの上を通り過ぎて、飛んでいく



「え、まってぇー!」



ポトッと落ちてコロコロと転がって行くボールを追いかけていくと、誰かの足に当たり止まる



「あ、すいません…」


誰に当たったんだろうと思い顔を上げるとそこにはよく知る人物


「お兄ちゃん…!」


「藍菜…どう、ボールはうまく投げれたの?」


う…

そんな黒い笑顔で聞かないでよ…





「……まぁ、いつもよりは…」


だけど13Mとは言えないっ…!


「あっそ」



「…で、お兄ちゃんは?何してんのこんなところで」


こんなにいっぱい人がいるところに来るなんて珍しい


「別に見回りだよ」


そういいながら、ちょっとイライラしてるっぽいお兄ちゃん


嫌なら、来なければ良いのにな…


「そう、ごくろうさま!……じゃあうちはあと1回投げるチャンスあるから行くね」



うん、お兄ちゃんのイライラがこれ以上募らないようにするのにはこれが一番だ



「…藍菜」


「ん?」


「………」



「何?」


呼び止めたのはお兄ちゃんなのに、うちの目を見たままのお兄ちゃんは7日何も言ってくれない



「…45度」

「……へ?」


口を開いたかと思えばいきなり変な言葉を言い出した兄



「上45度見ながら投げてみなよ」


そう言うと去っていく兄



「……45度?」


そんな兄の背中を見送りながら、頭にハテナマークをつけたうちは兄の呟いた言葉を繰り返した








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