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檸檬


体質系ミュージカル。

学園祭3日目の大目玉といえる催し物に、学内の半数が足を運んでいるのではないかという人数が集まっていた。



通路まで満席の客席を見ながらスタッフルームに入っていった蜜柑たちはお目当ての人物を見つけ、こう叫ぶ。



「白雪姫やーーーっっ!!」

「来るなって言っただろーーーっっ!!!」



アリス学園の学園祭は、全国からみても最大規模と言っていい。

技術や商品発表、パフォーマンスは生徒たちの将来にリアルに影響する。

大勢の人間が見に来る演劇となれば、それこそ一番ふさわしい人間が選ばれるわけであるが、そこに本人の意向がどれほど組み込まれるかはその時々による。

どちらにせよ不参加は認められていない。



件のルカだって自分に与えられた役割ぐらいはきちんとこなそうという責任感ぐらい持ち合わせていた。

だが、こればっかりは納得いかないのだ。



体質系ミュージカルの演目は「眠りの森の白雪姫」。

主役は白雪姫と眠り姫の二人。

その主役が、なぜ女装した自分になる?



「ルカぴょん可愛いねえ・・・・・・V」

「でしょーv」



そこの同級生ども、ほんわかした温かい目でこっちを見るな。

いつも変な服着てる教師は鼻を高くして胸を張るな。

何がルカ君にぴったりな役だ、はじめから嫌な予感はしていたんだ。

そして。



「ホンマにかわいーっっルカぴょんv本物の女の子みたーいすごーい!」



関西弁のツインテールの転校生、その台詞は聞きたくなかった!!!



佐倉蜜柑。

実は気になっている女の子からのそんなセリフは男の子の心を盛大に凹ませた。

ついでにその兄である檸檬からの憐みの目がなによりいたたまれない。

彼は基本何も言わないが、たぶんあれは「ルカ君、落ち込まないでね。妹には悪気はないんだ、ごめんね」と言っている。



これ以上はここに居たくないと写真を撮られる前にぷいっと控室へ戻ることにしたルカは棗にも目もくれず立ち去って行った。


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あきゅろす。
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