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檸檬



あの誘拐事件の後、玲央の声フェロモンから棗やスミレを守ったり学園と連絡を取ったりといった活躍をした蜜柑は、晴れて「星なし」から「星1つ」の星階級アップを認められた。

おかげで彼女は屋根裏部屋生活からも脱し(ちまみに今までは檸檬の部屋で寝かせてやることは出来なくはなかったが、兄妹とはいえ毎日女子生徒を男子寮に出入りさせる訳にはいかなかったので、週に何回かのお泊りのみだった)、星1つ(シングル)用の六畳一人部屋で過ごしている。



それは良いのだが。

寝心地の良いベッドは寝過ごしやすかったらしい。



文化祭の朝、朝食になかなか現れない妹の部屋を訪れた檸檬が見たものと言えば、この日までの文化祭準備や担当教授のいないの能力自主特訓に忙しかった疲れのせいかいまだにパジャマで目を覚まさない蜜柑の姿。

幸せそうに夢の世界にひたる妹を叩き起こすのにはなんとなく躊躇があったものの、開会式に遅刻するのもさせるのも避けたい。

顔を洗わせ制服を用意し、菓子パンを片手に握らせ引っ張ってきたのはついさっきの事だ。



「ていうか今何時だ?・・・・・・うわ、あと5分で開会式始まるぞ」

「ええ!?急がな・・・・・・ぎゃっ!!」



そうこうしていると、手元の携帯電話で時間を確認した檸檬の台詞に、慌てて走るスピードを上げた妹は、何に躓いたのか顔から倒れ込んだ。

おかげで片手に持っていたパンは地面に落下、膝小僧をすりむいて痛みに泣き始める。

「蜜柑・・・・・・おまえ小学五年生だったはずだよな」と檸檬は思いつつも、泣くな泣くなと優しく声をかけた。



「あちゃー・・・・・・これは痛いな」

「うああー・・・」

「もう開会式は諦めて保健室行くか。それから遅刻して行こう。怪我したせいで遅れたって言えば怒られないだろ」

「そんなぁー・・・・・・蛍や皆と一緒に開会式出ようって言ってたのに・・・」

「たしかに残念だけどな。ほら立てるか?大丈夫だ、開会式も40分ぐらいはあるから行っても終わっちゃってたって事にはならない。もし間に合わなかったら俺も一緒に欠席するから、な?」

「兄ちゃんゴメンな、ウチのせいで遅刻してもうた上にぃ・・・・・・」



「どうしたの?」



ほら泣くな、本番は開会式じゃなくてRPGなんだから、その時精一杯がんばればいいんだよ、とか言っていた檸檬の後ろから声がかかる。



「初等部の子だね、転んだの?」


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あきゅろす。
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