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小連載
(BSR逆トリ)

我が家に猫がやってきた。
いや、来たというのは不適切か、連れてきたというのが正しいのか。
漫画みたく川から流れてきたダンボールに入った子猫ちゃん合計ひいふう…沢山。
後からちゃんと数えてみれば九匹。よくそれまで沈まなかったな。

水の染み出した箱に入っていたせいだろう凍えていたのもちらほらとしていた。
そのためお湯で暖めてやるべく現在子猫の入ったダンボールを友人と共に運び、我が家の風呂場に到着したところだ。

「とりあえず怪我してるやつは病気もってるかもしれんから、綺麗なのと隔離してやらなあかんで」
「ん。ごめんな付き合わせて」
「今日は塾ないしええんよって。このタオル使ってしもても大丈夫か?」
「ん。」

自宅でも猫をニ匹と犬を飼っている友人は快く協力してくれ、案外早くに作業は終わる。
しかし濡れ鼠ならぬ濡れ猫九匹は床に下ろした途端に乾かす暇も与えてくれず窓に突進。
おかげでびしょびしょになった廊下を拭かなければならなくなった。

「元気やな」
「喧嘩とかされても困るんやけど」

ちなみに我が家はペット可のアパート。
全部は無理だが一、ニ匹は引き取りたいなとか思い始めていたりする。
軽い願望だが。生き物を飼うにはもっとちゃんとした責任がつくぐらいわかってるので割と現実的にどうしよう。

「学校の先生あたりに連絡して引き取り手探してもらうか」
「せやなぁ。しゃーないウチも高校の友達に訊いてみたる」
「ありがとな」

しかしこの機会を逃しては私がこの先動物を飼うこともないだろう。きっかけは大事だ。
明らかに病気もちだったりする子や片目に怪我してたりする子なんか引き取り手はそうそう無いはず。
余ったら引き受けよう。もし引き取り先が見つからなかったらこの隣の友人も巻き込んでやる。

「でもこいつら兄弟っぽくないよな。トシは同じくらいやけど」
「たしかになぁ。白黒茶色、雑種にしてはかわいいしなんだってあんなダンボールに入れられとったんやろか」
「つかアンタ九匹もおって餌代とか大丈夫か?何匹か連れて帰ったろか」
「ん。いや大丈夫やろ、このアパートに住んでる人らは猫嫌いな人もおらんしいざとなったら頼るわ。」
「おーたっくましい。餌付けはしっかりしときや、逃げたときに戻ってくるよう」

窓ガラスをかりかり引っかいたり突進したりしている子猫たちを横目で見ながらそんな会話をしていればボーンと振り子時計が時間を告げる。
そうすればギャアと叫び声が上がり、声の主である子猫たちはいつの間にか一箇所にかたまり時計を睨みつけていた。

「随分と警戒心の強いお猫様方ですことなぁ。」
「ん。始めてきた場所で怯えてんねんやろな。とにかく落ち着くまでほっとくわ」
「それがええやろ。外の方が危険でここのが安全やって分かれば出ようとも思わん」
「トイレどうする」
「そこのベランダに続いてる窓開けとく。塀は高い方やし落っこちはせえへんやろ」

幸い落っこちたとしても下は芝生だ。
ちっこくても猫、どうにか上手く着地してくれるはず。
この周辺は田んぼと畑ばかりで車の往来は朝を除いてほぼ無い。

「今度ウチのチャーとオキナ連れてきてええか?」
「こいつら雄やで。また増えたらどうするん」
「まだ子猫やろ。ウチのはおばちゃんや」

友人の言葉に、どっしりした茶色と白の老齢の猫と、ちっちゃい頃は真っ白いミルクのような子猫だった黒色のまだら猫を思い浮かべる。
こいつらもあんなかんじに昔の面影も無く成長してしまうのだろうか。諸行無常。

「爪とぎは勘弁して欲しいな。雄やからマーキングもあるやろし」
「いっそグミの所みたいに一部屋猫用の部屋にしてしもたらどうや?」
「あれはさすがに嫌や」

動物屋敷に住む年下の女の子を思い浮かべて首を振る。
一部屋丸々犬猫の部屋となっている家に上がったことはあるが、それはもう臭かった。
掃除をしない家族のたまり場だったのだが二度と行きたくない。
こちらのアパートの管理人は身内だったりするのでその辺は甘くなるが、迷惑となるのは明白だ。

「しばらくは好きに遊ばせとく。外に出すのは勝手が分かってからやな」

そんなこんなで、猫がいる生活が始まったわけだった。


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九匹の猫はそろっておかしな猫だった。
庭を走り回って喧嘩をしたり日向ぼっこをしたりと猫らしい習性もあるらしいがそれらを帳消しにしておかしいかったのだ。
行儀が良すぎるのだ、所構わず臭い付けをしたり毛玉を吐いたり爪を研いだりといったことをまったくしない。
最初は行儀が良いと思ったがどっか病気なのではないかと心配にすらなるぐらいに。

(かといってバラつきはあれどちゃんと餌も食べるしちゃんと眠るしほっときゃ動き回ってるし)

学校へ行っている間何をしているのかは知らないが、とくに問題は起こしていない。九匹もいるというのに。
猫を引き取ってくれる人物を探しているがなかなか見つからないのは仕方がないと思う。
引き取られていったらいったで上手くやれるだろう、この行儀の良い猫たちなら。若干可愛げにかけているが。

(片目の潰れたのは割と元気にあっちこっち動き回る。その後ろにくっついてる左頬に傷があるやつは大抵庭に居る)
(一番元気な奴はよく食べる。隣にいるのはよくどこかに隠れてる)

しかし問題がある。
全員揃ってちょっとでも近寄ったら逃げやがる警戒心の強い猫なのだ。異常なぐらいに。
もし懐かれたらもらわれていった家に馴染めなくなってしまうかもと思っていたが人に慣らせておくのも必要か。

(愛想が無い奴は日向ぼっこが好き)
(警戒心が少ない二匹はおもちゃやテレビにじゃれつく)
(一番警戒心が強い奴はご飯を食べない。あと病気持ちのやつの傍にいる)


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猫化逆トリ。
友人の飼い猫の容姿と名前をまんま拝借。

何て呼ぼう。

正宗→片目猫
小十郎→傷跡猫
幸村→食欲猫
佐助→潜伏猫
元就→ベランダ猫
三成→小食猫
吉継→病弱猫
元親→機械好き猫
家康→ロボット好き猫


うーん、思い浮かばない。
強面猫とか俊敏猫とかアホな造語しかでてこない。


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あきゅろす。
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