小連載
先生
「初めてあなたに会った時に、ね。銀時によく似た面差しやその髪を見て、ぞっとしたんですよ」
「・・・・・・」
「私はあの子をこの里に連れてきた時から決めていたはずなのです。最初はあの子の師として見本になれる人間であろうと思っていました。そしてもしも銀時の本当の家族が現れたら、名残を惜しみながらも笑顔で見送ってあげるのだとね。」
「・・・・・・」
「だけど時とは人の小さな決意など砂粒のように攫ってしまうものです。季節を跨ぐ度に、私自身があの子の家族でありたいと思い始めました。そしてとうとうあなたがここに現れた」
「あなたを見た瞬間、背筋が凍りました。あなたが銀時を連れて行ってしまうと、すぐにでも追い返してしまおうと考えました」
「・・・・・・ええ」
「あなたが、江戸からも都からもずっと離れたこんな片田舎に住む子供一人を見つけ出すために、どれだけ苦労なさった事か。想像しなくてもわかるだろうに、そんな事など知らないとばかりに胸が騒いだのです。――家族をとられるなんて冗談じゃない、と。」
「ええ」
「私は生まれてこのかたずっと好き勝手に生きてきた人間です。自分の意地を通すために時には周りの声を無視することだってしばしばある。そんな自分が嫌いでした。あの時の私はその通りの事をしようとしていた。
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