小連載 7 魂が肉体を離れる瞬間というのはあんまり気持ちのいい感覚では無い。 宗教的なきつくて重い服を脱ぎ捨てたような解放感も確かにあるが、それ以上に喪失感とか空虚な気持ちを覚える事の方が多い。 とくに心臓の音が聞こえなくなる瞬間は、言い表しようがないくらいに不安な気分になる。 なにせ母親の胎内にいるころから聞いてきた音だ。 法等の場合は憑依してからの話だが、それでも寝ても覚めても二十四時間四六時中傍に寄り添った響きなのだから。 「――せめて、梅の花が咲く頃までは生きていたかったのに」 [*前へ][次へ#] [戻る] |