小連載
3
しかしそんな杞憂も無く日々はトントンと過ぎ、法等少年はあっという間に成人した。
まあ精神年齢云々で子供によくある体を冷やして風邪をひくだとか、無茶をして怪我をするいう馬鹿はしなかったし、肉体に間借りしている魂に適当な薬の知識もあったおかげでもある。
まあそんなこんなで今では立派に一家の主になっていた訳であったが結婚はしていない。
恋人は農耕。
目下の目標はどうにか鉄製の農具を手に入れられないかと考えているところだ。
あと竪穴住居はそろそろ卒業したい。
せめて室町時代あたりならば日曜大工程度ならどうにかなるはずなのだが、この神代と呼んで良い村には鉄製の金槌も釘も無いのである。
「35、40、45、50!ノルマ達成!!ありがとう助かった!はいお駄賃!」
「深夜テンションうぜえ」
「明日は出荷日だからほぼ一日中藁束と向き合ってたからねあはは・・・・・・やべえ眠い。先に汗流して来てこい、飯作っておくから」
三日で草履50足。
それが彼の目標だ。つまり鉄製農具を買う金を貯めるための内職。
どうにか商売として成立してはいるが、子供の手を借りて数をそろえなくてはならないぐらいにはカツカツである。
ちなみに金に困っている訳でも無いのに人一倍働く彼は村一番の出世頭であった。
周囲からはさっさと嫁を取れと言われるが、多分あと二年も無い命であるのでその気はない。
「いっそ養子でもとればうるさく言われるのも無くなんのかなー。連中もここのところの水不足に自分らの事で精いっぱいのはずなのに人の事には口出ししやがって」
「だからこそ他人の事を言い合ってどうにかして気を紛らわせたいんでしょう。実際このところ井戸の調子も良くないですし」
「だから井戸の水位を図っておけって言ったのにさ。自分の生活に影響が出てきてからやっと気が付くんだから世話無いよ。このままじゃ何事も早期発見が一番大事なのに、取り返しがつかなくなくなる最悪のパターンだよ」
「水浴びに行ってきます」
「いってら」
最近手伝いに来てくれていキツイ印象を受ける目元をした子供を送りだし、法等はありあわせを使って粥を作り始めた。
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