小連載
7
紫陽花が咲く、梅雨の季節も本調子になった。
任務中にいきなり夕立が降るのも珍しくなく、毎日かっぱと傘を携帯しなくてはならないあたり荷物が増えて面倒だ。
そんな事を話しながらアラシたち下忍班はやっとたどり着いた屋根のある茶店で暖を取っていた。
今日は少し遠方での護衛任務だった。
ちょっとした小金持ちのお宅の引っ越しの手伝いと、その際に起こる可能性のある泥棒の類を牽制兼見張り。
実際に家に飾られた調度品や箪笥の中身をちょろまかそうとした馬鹿達を何度か捕まえて突き出したり、そこそこ労力の要る仕事だったと言える。
荷物整理に飽きた子供が雨の中遊びに行こうとするのを止めたり、距離を歩くのに難儀するおばあさんを負ぶさりながら傘を差したり。
そんなふうに気も使わなきゃならなず、疲れに疲れた同僚にタオルを手渡せば椅子に座り込む。
「し、しんどい・・・・・・」
「まあ、ただの護衛任務じゃなかったからな」
「つーか馬鹿だよなあいつら。バックとか宝石盗んだほうが値段も高いし確実だってのに、よりによって目立つテレビ盗もうとするなんてよ」
「大きくて目立つモノのほうが目につくんだろうねえ。」
「壁の絵はどう見てもレプリカなのにね」
基本的に犯罪事に対してはドライな班である。
今現在の木の葉の下忍の班編成は、班の集団としての団結力を重要としているので、個々の力の総合性を重視しているが、性格は似通っていたらしい。
男2人はそれぞれ体術と剣術が得意で、紅一点であるアラシは忍術を使ったサポートが上手い。
ついでに友人としての間柄もそれなりのもので、下忍同士の意見交換も積極的。
彼らの上忍師自身も、三代目はお互いを高め合える上手い班編成をしてくださったものだと感謝すると同時、吸収の速い生徒達に誇らしい気分になる。
「おいアラシ、今日アカデミーの午後の授業、担任の先生が外任務中で自習になったから、弟のお迎えに早めに行かなきゃならないんだろ?俺らで報告書出しておくからここで行って来いよ」
「えっ、いいの?」
「いいよ。いっておいでよ。ねえ先生」
「ああいいぞ」
濡れた髪をタオルで拭いていたアラシは嬉しそうに笑った。
「ありがとう、また明日ね」
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