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小連載


いまだに外は雨が降っている。

帰宅したアラシは窓を横目で見ながら、戸棚から傘を2本取り出した。

玄関で1本を開き、もう1本を小脇に抱えるついでに雨がっぱもつける。

そして水溜りへ雨靴を履いた足で一歩踏み出す。


「さて、カワイイ弟のお迎えに行かなくてはってーの」


向かうはアカデミー。


−−−−


同級生と自分は、なんとなくどこか違っていた。

まず自分は誰より背が小さかった。

皆はアカデミーに弁当を持ってくるけれど、自分にはなかった。

授業参観には誰も来ない。

つまり自分には弁当を作ってくれたり授業参観に来てくれる家族というものがいない訳だった。



家族がいないというものは不便だった。

だって、家族がいれば。

こうして今日のように、朝には晴れていたくせに午後から雨を降らす空や、笠を持ってきてくれた家族に迎えられる同級生を、一人で睨み付ける羽目にはならないはずなのだ。

こんな寂しい思いはしなくて済むはずなのだ。




そんな事を考えていた一人のアカデミー生は、土砂降りの屋根の外をどうやって帰ろうかと考えた。

アカデミーには彼のような生徒のために何本かの置き傘はあるのだが、彼は既に数に限りのある早い者勝ちに負けた後だった。

待っていればそのうち止むだろうか。

けれど止む頃には真っ暗になっているかもしれない。

彼には傘を持ってお迎えに来てくれる家族はいなかった。

だからどうにか濡れずに変える方法を考えるしかないのだ。



幸い今日はこれといったタイムセールの類はない。

この際濡れてしまう事は諦めて走って帰ろうか、と彼が考えていると、人気の少なくなった玄関口にまた一人の生徒が現れた。



「うわっ、めちゃくちゃ降ってんじゃん。うっかり図書室で寝ちまったらこれかよー・・・・・・」

「・・・・・・」



図書室で借りたらしい本を小脇に抱えたその生徒は困った顔をして独り言を零す。

確かに困るだろう。

自分のように手ぶらならともかく、借り物の本を濡らしてしまっては先生に大目玉をくらってしまう。

この場合は本を返してしまうか、ビニール袋でも探して来るのが正解だろう。

どうするのだろうかと彼がその生徒を見ていると、その生徒はこちらを見て近づいてきた。



「なあ、おまえひとり?」

「・・・・・・そうだけど、なんだってばよ」

「俺、姉ちゃん待ってんだ。一緒に待たねえか?」

「俺?」

「嫌だったか?」



話しかけられるとは思っていなかった彼は少し驚きながら話す。

話しかけてきた生徒は、多分同い年ぐらい。

けれど見た事は無い顔なので一つか二つ下の学年の生徒なのだろう。

それなら、彼の事を知らないのかもしれない。

少しだけ期待しながら、彼は言った。



「俺はいいけど、おまえはいいのかってばよ」

「別に良いじゃん。俺の姉ちゃんを待つだけだし」

「そうじゃなくて、その姉ちゃんは俺のこと嫌いじゃないのかってば。」

「は?何言ってんだ、俺の姉ちゃんは良い姉ちゃんだぞ。知らない奴にだって優しいんだ。いいから一緒に待ってようぜ、姉ちゃんならきっと任務が終わったらすぐに迎えに来てくれる」

「えっ、お前の姉ちゃん忍者なのか!?」

「そうだぞ、もうすぐ中忍試験受けるんだ。合格間違い無しって言われている、優秀なくノ一なんだぜ!」



姉を馬鹿にされたように感じたらしいその生徒は少し怒って言った。

彼を含め、アカデミーに通う生徒は総じて忍者に憧れ忍者を目指す子供たちだ。

既に忍者として任務に出ているというその姉に驚いた彼が訊ねると、嬉しそうにその生徒は話し出した。



「姉ちゃんもアカデミーに通ってたんだぞ。俺だって姉ちゃんみたいな優秀な生徒になって、優秀な下忍になりたいんだ。」

「俺も俺も!俺も誰より強い忍びになるんだってばよ!」

「だから今日だって図書室で勉強してたのに雨なんか降りやがって。つーか起こさず帰るなよあいつら、姉ちゃんが迎えに来てくれるのは嬉しいけど!」

「おまえ姉ちゃんが大好きなんだな」

「当然!ずっと一緒に暮らしてんだ。今は俺のほうがずっと弱いけど、いつか俺は姉ちゃんを追い越すぜ!」



「ところでおまえの名前は?」

「言ってなかったっけ」

「聞いてないってばよ」

「俺、雨笠ウネリ!お前は?」

「俺はうずまきナルトだってばよ!よろしくな!」


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あきゅろす。
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