小連載
4
「濡れたなあ」
「濡れたねぇ」
「そうだね」
午後からいきなり降り出した通り雨に見事遭遇したアラシら下忍班は飲食店のじゃがいもの皮むきのお手伝い任務を室内に移動しつつ小言を言う。
雲や風の具合から天気を予測するぐらいの技能はアカデミーで身に付けているのだが、いくら雨が降ると言っても信用してくれず室内に移動させてくれなかった店員のおかげで濡れ鼠になったのだ。
ところでなぜこんなに大量のじゃがいもが必要なのだろうか疑問だったりもする。どこの軍隊だというぐらいの量のじゃがいもが入ったバケツを担いだアラシは溜め息をつく。
「アラシの言ったとおり、着替えを部屋に置いておいて正解だったな」
「忍者は先の先を読め、ってね。あ、ちょっとごめん」
「おいこんなところで着替えるな!せめてトイレで着替えろ!」
ためらいも恥じらいもなく上着を脱いで着替えを着込いはじめたアラシは、それに慌てる同期2人をくすくす笑いながらも時に気に留めない。
三人は14歳や13歳の班、思春期と反抗期の真っただ中。
ただ紅一点である彼女はそういった時期をとっくの昔に終えてしまっているのでそんなこと知りもしないのだ。
「別に下着まで脱ぐわけじゃないんだからいいでしょっての。そんなに気になるなら後ろ向いてなよ」
「見えなくても気になるんだよ気配とか音とか!」
「見られたって怒らないっての、このくらい」
「むしろ怒れよ!恥じらいを持てよ!」
「恥じらいなんか持って支度に時間かけちゃダメでしょーが。この大量のじゃがいもを上のレストランまで運ばなきゃならないってのよ?」
ベルトを撒いて簡単に整えたタンクトップが雨を吸い込んでぺったり体に張り付いていたり髪を結び直したりする時にのぞく白いうなじだとかに一々反応する2人。
そんな2人の様子を分かっていながらもアラシには一向に行いを改めようする様子はない。
普段の生活ではそうでもないが、忍びの任務中は自分のことを後回しにしてしまう性格も原因か。
こんな会話を聞いても、我らが上忍師はそんな彼女たちの様子を見ても女の子は成長が早いんだなぁ、ぐらいしか思っていない。
難しい年頃の男子たちには「忍者たるものその程度で気を乱すな」とまで言う。
何かがおかしい、と少年二人は叫んだが無視された。
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