小連載
3
弟がアカデミーに入学したその日から、送り迎えをするのは姉であるアラシの役目だった。
だから弟の交友関係は大体把握していたし、向こうもアラシがウネリの姉だということは知っている。
少し大人しめの性格をしている弟の友人は似たような性格の少年少女で、友人は狭くとも深い親友。
皆、もう長い付き合いになる。
(・・・・・・あれ?あの子・・・・・・)
ちょうど学年が上がった頃か、そんな時だ。
その子供を見つけたのは。
お迎えに来た親に駆け寄る子供たちの中で、一人。
広場のブランコに腰かけ漠然とこちらを眺める一人の少年を見かけたのは。
「あ、ねーちゃん!」
「ウネリ。迎えに来たよ」
アカデミー前の広場に顔を出せば、すぐさま駆け寄ってくる今度10歳になる弟。
アラシはまだまだかわいいなぁと思いながら微笑み手招きする。
「じゃあなみんな、僕ねーちゃんと帰るから!」
「おー、また明日な」
「ウネリのお姉さんこんばんは!」
「こんばんは。帰ろうかウネリ」
律儀に挨拶をしてくれる弟の友人たちに手を振り返し、アラシはその手を少し下に下げる。
そうすればすぐさまウネリはその手を握り込む。
アラシとしてはそろそろ弟も10歳、言うなれば小学四年か五年生になったのだからもう嫌がるようになるのかなと思うのだが、ウネリがそんな素振りを見せる事は今のところ全く無い。
(・・・・・・先生の言っていたこともあながち間違いじゃないのか・・・・・・?)
ちらりと横目でウネリの顔を見る。
身長はまだまだ追い付いて来ていないが入学当時よりもずっと頭の位置も高い。
自分だって成長期なので追い抜かされるのはまだ後になるだろうけれど、そうなる前に姉離れはしたほうが良いはず。
しかし自分も弟も今のところそれを望んでいるわけではない。
アラシは弟がかわいいし弟離れの概念はあんまりない。
さてどうしよう、と。
以前よりも確実に大きくなった弟の掌を握りながらアラシは肩をすくめた。
こうして彼女の日常は過ぎていく。
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