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小連載



露出の多い衣装を纏った女性が盆を運び、メダルやカードが散乱するゲームテーブルに人相の良いとは言えない男が座って酒を楽しむ。

所詮夜のお店と呼ばれるのであろうそこに、一人だけぽつんとその場に似合わない子供が隠れていた。



つい最近までは埃をかぶっていたらしくあまり音の良いとは言えないオルガンに向かい音を奏でていた。

見た目の年は二度目の成長期を迎えたばかりのいろいろと発展途上な少女だ。

せめて店の雰囲気を装おうとしたらしく黒い髪を背中に垂らしている。

そこに髪飾りなどくっつけているのが背伸びした感じがして可愛らしいと思えるらしく、たまに大人たちから微笑ましい視線を送られている。



(・・・私のピアノなんて小学生のバイエル程度の腕前なんだけどなぁ・・・・・・)



鍵盤の上をあちらこちらへと動く指を見ながら真咲は溜め息を付きたいのを抑える。



悪そうな大人、強欲の人造人間の手を取りやって来た彼らのアジト「デビルズネスト」。

なるほど自分はアメストリス南方地区に迷い込んでいたのかと思う一方で、合成獣の仲間の名前を覚えることをまず優先させ。

欲に忠実で金と女に貪欲、ありえないことなんてありえないという名言を口癖にするグリードの行動パターンを大体把握した頃にはこうして店のオルガンを鳴らすという仕事を与えられていた。



『真咲、』

『はい、なんでしょうか?』



背中に掛かった声に、オルガンの手を止めてふり向けばジュースと飴玉を手渡される。

どうやら彼らには自分のような子供はほんとうに子供扱いしかされていないらしいのはここで生活を初めて早いうちに理解した。

ならばそれに肖ろうと、親にもしないぐらいに子供らしくにこっと笑って手を出せば、彼らの武骨な掌で頭をなでられ髪をかき乱される。

派手な髪飾りはここの主の趣味が反映されているのか、それとも誰かの落とし物なのかは知らないが似合っていないことぐらい承知している。



『それ食べたら、弾き語りしてくれよ』

『はい、わかりました、ありがとうございます』


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あきゅろす。
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