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小連載
序章

「うぁぁあああ、あああ、ッッッ!―――――!?ひ、ぅあああ゛あ゛ぁぁぁあああ!?」



雷に打たれたようなバリバリという音が背骨を貫く。

まるで火のついた花火を飲み込んではじけ飛ぶような、目の血管が破れるような痛みと衝撃。



「・・・・・・、・・・・・・・・・?」



千切れた髪ゴムがどこかへ飛んだ、とどこかで思ったときにふっとそれらは消え、代わりに周りから音がざわざわと鼓膜を揺らし始めた。

周りに人がいる気配、足と掌に冷たい地面の感触。

じんわりと冷静さを取り戻した時に目を上へと向ければ、そこにあるのは、



「ッ!?」



ビクッ、と真咲は目の前のものを凝視したまま身体を縮めて震えた。

先ほどまで自分は高校までの坂道を走っていたはずであり、遅刻しそうだと焦っていた。

だが今襲ってきた焦りはそれとはまったく別のもので、同時に混乱と焦燥を巻き起こし、嵐のようになって脳みそを侵す。



「ХХХ、××××、―――――?」

「――ΛΛΛΛ、xx、」

「XXXー?×××xxx」



真咲は自分の頭を抱え、やはり髪ゴムがどこかへ行ってしまったとぽつりと思ったきりにがばりと顔をもう一度上げた。



「・・・・・・、何此処」



背の高い金髪の男や茶髪の男が、軍服のようなものを着てこちらを見ている。

床には割れたティーカップが一つ転がっている。

白い壁紙の壁。

緑色の、どこかで見たことのあるマークが大きく描かれた布が掛かった塔が窓から見えた。

呟いた言葉に、金髪の男達がまたざわつく。



「、」



窓から目線をずらし、軍服を観察する。

青色のどこかで見たことのあるデザインだと思い、軍服を着ていない人物を見つけて、目が合う。

金髪の赤いコートの少年が目を見開いた。

何か英語で叫ぶ声。



「!」



後ろから近づく気配に、とっさにふり向けば黒髪の男がそこに居る。

白い手袋に包まれた手がこちらに差し出されていて、そして。



「なんなんだよ、どういうことだよ!!」



野球の応援でも出さないくらいの大声で叫んだ。

何でもよいから勢いが欲しかった。

此処は危険だ。此処に居たくない。逃げてでもどこか別の場所へ、せめて言葉が通じる人間が居る場所へ行きたい。

その勢いでどうにか半分抜け落ちた腰を起こし、飛びあがって机の上へ飛び乗り、窓枠へと走る。

多分ここは二階だ。



「××××!――xxxx!!」



軍服の男達が何かを叫ぶ声を無視し、窓から飛び降りた。

嬉しいことに飛び降りた先は芝生で背の高い生垣が並んでいた。

空中で身体をひねって背中から生垣に飛び込み、めちゃくちゃになった髪の毛を引っ張りながら広場のような場所を走り抜ける。



そこで気が付いた。

私はこんなに早く走れたっけ?



とりあえずローファーじゃなくて良かった。

柔らかいスニーカーの底が石の地面を踏むのを感じながら一心に走り、見つけた高い塀を見てどうしようかと一瞬思う。

もしかしたら、と思う。

幸い周りに人は居ない。

失敗したとしても塀を伝って出入り口を見つけることは出来るはず。



そして。

勢いのまま、壁を垂直に走り登り、向こう側へと着地した。


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