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小連載



お知らせします。

俺、佐倉檸檬は特力系クラスだった筈ですが、なぜか『任務』に狩り出されるようです。



だーって休みの日に急に呼び出されてあの大量のアリスストーンが置かれた部屋で、



「君の声色のアリスはこの学校でも特異な性質を持っているんだ。本来なら体質系に属されるがあえて君には特力に籍を置いてもらった理由はその力を存分に振るってもらいたいからなんだよ。」



なーんてエセ小学生校長ににっこり言われたんだから想像はつく。



俺が自分のアリスに気が付いたのは案外遅くて5歳ぐらいのとき。

田舎の幼稚園でなんかの舞台発表で劇をすることになった時に台本を朗読していたら、自分の声を操れることに気が付いた。

ナレーションを努める子がちょうど休みだったから代わりにやったのだ。

台本を読んで暗記してたら休んでいたその子とそっくりの声が自分の喉から出てきた。

その時は慌てて自分の声に戻したけど、家に帰ってからブツブツ試してみた。

低い高いだけじゃなく、女の声でも男の声でも老人でも関係なく操れたのだ。

ためしに身近なじいちゃんの声を真似したらやっぱりそっくり同じになった。



驚いたぞ?

それまでは俺は自分にアリスが無いかもしくは無効化か盗み入れるの発見が難しいやつなんだろうと思っていたんだから。

はたから見れば変身できると思い込む痛い子とは分かっていたけどテレポートはいくら念じても出来なかったし。



そして試していくうちに自分の持っているアリスは自分の声を変えるだけじゃなかったと気が付いた。



俺のアリスは声色 だ け じゃなく、物体の『揺れ』を操るものだったのだ。



とある日ラジオテープを扱っているとき、ちょっと「もう少し大きい音にならないかなー」と思ったら何もいじっていないのに音量が調節されたのだ。

このときも驚いた。

自分の耳がおかしくなったのかと思ったけど違う。

がやがやとうるさい学校の朝礼のときに耳をふさいで振動に入ってくるなと念じてみたらまったく聞こえなくなった。

というより、俺のからだの皮膚一ミリほどに振動を消し去るバリアのようなものが張られた、というような感覚だ。

ぎゃあぎゃあうるさいはずなのに自分だけ聞こえていなくて微妙に怖くなったのは内緒だ。



それからまたいろいろと試してみて、特定の振動を察知しなくさせることもできるようになった。

例えば目の前で喋っている相手の声は聞こえるけど、後ろで点いているはずのテレビの音は聞こえない、見たいなぐあいだ。



そこまでいって、こりゃやばいと感じたのだ。

強すぎる、と。



大体つかめたこのアリスの性質はこうだ。



まず生き物にも通用すること。

音を聞こえなくさせるバリアを部屋に張ってみたら、じいちゃんにいくら呼びかけても返事してもらえなかった。

あと声真似だと言って何パターンか試したときは無効化を持っている蜜柑にも通用した。

部屋に展開するときは蜜柑にも通用したが、特定の人物に音を聞こえなくさせることは出来なかった。

恐らく声は純粋な空気の振動なので、アリスを直接使うのとは違うのだろう。

けど部屋全体にバリアを張ったときに蜜柑が傍に居ると微妙な扱いにくさは出たが通用しなくは無かったので簡易的な結界だ。

さらに部屋に振動を逃がさないバージョンの結界を作ってみた。結果その部屋でいくら暴れても誰にも気付かれなかった。



けど出来ないこともあって、振動が無ければ発動しない。振動させない状態で太鼓をいくら見つめていても音は出なかった。

結果的に出たのはもともとの振動がなければ扱うことは出来ないという結論。



だが、物っていうものは少なからず他からの振動を受け取っている。

太鼓の近くにおいていたアナログ時計の針の音を強くして空気を振動させてみたら、その空気を解して太鼓から音を出すことが出来た。



このアリスは危険だ。



声色のアリスと言うだけなら学芸会で活躍できる程度に収まれただろうけど、振動そのものを操るとなったら話は別。

内緒話を絶対に聞かせないようにする程度なら良かったけれど、俺のアリスは強すぎた。



俺は一度だけ、音の強弱を操って周波数を作ってガラスを割ったことがある。



物体には特定の周波数を浴びると破壊されるという――つまり、やってみれば人間の身体を内側から破裂させることも出来るわけだ。

今は全ての音程や強弱を操れるわけではないが、このアリスが強くなるに連れてできるようになるのかもしれない。



指を鳴らす音を操って打ち上げ花火みたいな音に変えたこともあるし、ドアを開ける音をとんでもない爆音に変えてしまって近くにいた飼育用の金魚を気絶させた事もある。



もしかしたら、震度1の小さな地震を、7や8に引き上げてしまえるかもしれない。

実際出来たのだ。

地面は絶えず揺れ動いているというのは本当らしく、何の揺れも感じない状態からコップに入れた水をこぼしてしまえるぐらいにまで揺れさせることが出来た。



目をつけられるのは、必須だった。



すでに俺のアリスが声色ではないと気付かれている。

俺のアリスの強さを把握しているわけではないだろうが、鍛えれば音を通さない結界を作るぐらいができると思っているのだろう。

声色のアリスだってきっと使いようによれば魅力的なものだろうし。



強い力を持っているとは思っていないらしいから、制御アイテムを渡されはしなかったけど、結局あちら側に引き込まれるのは必須だったと諦めよう。

力が弱いと偽っている今では表立って危険能力系に入れられるわけではないが、ゆくゆくはどうにもならないし。

この学園には千里眼や心を読むアリスだってあるし、隠し通すことなど無理な話なのだ。



俺は諦めた。

それにあまり反抗的なら妹を盾に取られるかもしれない。

特力で力を鍛えた後は、どうせ危力系に移籍される。



(やってやろうじゃないか)


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あきゅろす。
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