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小連載



転入生の話は広まっていたらしい。

騒がしいからそうなんだろうと適当に思う。



檸檬は呼ばれるまで待っていてくれといわれた廊下であくびをする。



(チッ・・・バカ妹が・・・)



過去を悔いても仕方が無いとは言うが、やっぱりそれでも考えてしまうのが人間だ。



(そりゃこの学園でファンタジーするのはいい、日常どころか毎日絶対飽きないし平和とは言いがたいが楽しいに決まってる)



けれど、と考える。



彼は前世の記憶を持っていた。

その中で彼は15の少女をやっていて高校に通っているのだ。

前世というか、突然目が覚めたら男の赤ん坊になっていて由香という女性の腕に抱かれていたのだ。

驚きに呼吸止まってひきつけ起して出産直後の彼女を真っ青にさせた記憶はいまだ記憶にこびりついている。

ごめん、母さん。



嗚呼俗に言う転生と言うものか、と彼女・・・実際は彼・・・が気がついたのは早かった。

まず奴等だの遺志を継ぐだのと話す自分の母親らしい女性が、やばいことに首突っ込んでいるとは安易に想像がついた。

ついでに学園だのアリスだのクローンだのという話まで聞いて女性の名前が由香と知り。

極め付けに自分の隣で眠る赤子の名前は蜜柑と知った時には、転生どころかトリップまでしたのかよと狸寝入りを決め込んだのも彼は覚えている。



その時は、

双子の妹がヒロインでその兄かよ!

えちょっとまて私、ってか俺、まさかアリスだったりするわけ!?

と心の中で叫んだ。



性別が変わったことは気にしていなかったらしい。

彼女・・・彼は15歳の女子高生だったはずなのだが不思議なもので。



檸檬は多分思春期どころか生まれたての赤ん坊だったから考え方がそういったことに向かわなかったんだと想像している。

問題点を感じるようになったのは小学校に上がる年齢になったころであり。

女子が恋バナしている横で「よく考えたら俺、人に恋愛感情持っちゃだめだなこりゃ。精神的レズも肉体的ホモもごめんだわうわー」と思ったぐらいだ。

ついでにいうと精神的ロリコンもショタコンもごめんである。

中身25歳です。



それらはもう考えていない。

第一彼の知っている少女マンガの世界に、檸檬なんてヒロインの双子の兄の存在は無かった。

ならこの世界は原作と違うんだなと当時は決め込んだのだ。

自分の意志を通したって罰は当たらないだろうきっと。



そういう決断の後いろいろとあった10年であったが、ついにこの日が来てしまったと檸檬は若干緊張している。

原作を知っている檸檬にとって学園に転入なんてどんな危険フラグだ。

京都の田舎でのんびり暮らすほうが100倍安全だ。

学園に存在を知られなければいいのだ、と自分の持っていたアリスを隠し通すこと10年。

けれどそれも虚しく双子の片割れによって最悪な始まり方である。



ふうとため息。

会ったことは無いが父親とよく似ているのであろうこの金髪にももう慣れた。

さあもうぐずぐず言ってはいられない。



(さて、腹をくくりますか)



「はーい、転校生君入ってきてねー」

「・・・・・・はい」


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