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小連載
06


今度は付喪神であるらしい。



人間ではないことに驚くものの、形自体は人型である。

そして身長や体格も多少伸びた程度でそこまで支障はないだろう、なれるのを待てば良い。



そう判断した梔子――もとい山梔子守は、なんともなしにそのあたりを一周してみる。

大体4畳半ほどの正方形の空間。

熱くもなく寒くもない、風も吹かない結界の中。

闇の婆沙羅とはまた違う、異空間。



(……刀剣男士)



自分はこの鎖苦無の刀剣男士。その一体であるらしい。

そしてこの場は言わば神域。

受肉していない顕現前の肉体が保管されている場所、とでも言えばいいのか。

おそらく外にあるであろう鎖苦無の本体が顕現されれば、この空間から出ていけるのだろう。

自分が今腰に下げている鎖苦無は殺傷力皆無だ。



(……多分、山梔子守が、私をここへ連れてきたんだろう。)



なぜ?

なぜ、わざわざ自分の分霊に宿してまで梔子を神域に入れているのか。

だって梔子は特別鎖苦無を大切にしていたわけではなかった。大切にしていたのは姫様だ。

失いたくないからと魂を囲うのならば姫様をそうするだろうに。

いや、基本的に日本の神様は死んでもまた輪廻からまた還って来るからと待ち続けてしまうものではあるが。



とにもかくにも。

なぜ、山梔子守は、梔子を刀剣男士にしたのだろう。

考えても、わからなかった。



(……考えたところで、わからない。私はここで、顕現されるのを待つのみだ)



不思議と心は落ち着いている。

だって、感じるのだ。

ここは安全だ。

害するものなど何もない。



ここは山梔子守の神域で、つまりは梔子を守るための場所。

なにせ山梔子守のその名は、督姫が、「この苦無が梔子を守ってくれますように」と願いを込めて付けたものなのだから。


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あきゅろす。
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