小連載
4
世の中には禁書というものがある。
簡単に言えば、大人とか偉い人に読んじゃいけませんって言われて火の中鍵付き倉庫の中に放り込まれた本の事だ。
−−−−
「カシム君。あんま飲んじゃだめだよー。こんな最安エール、身体に良いはずないんだから」
「ならよぉ、イアーゴがいい酒飲ませてくれよ」
「そもそも未成年だろうがテメェ。まあ安いだけあって安物に更に嵩増ししたジュースだから度数低いし、料理酒程度のもんだけど。でも葉巻はダメ。しゃぶるなら飴にしとけ」
そう言いながらイアーゴはテーブルをはさんだ正面に座るカシムから葉巻を取り上げた。
かわりに飴を出されたカシムはじとりとイアーゴを睨む。
「なんだよお前の船、もっといいもんあるんだろ」
「飴はお嫌いですかい旦那」
「要るけど別のがほしい」
「じゃあも少しいい酒持ってきてやるよ。みんなには内緒な」
「ケチくせエ。もっとパーッとよこせよ」
金持ってるくせに。
そんな風に言外に訴える弟分の目に商戦の船長は少し苦笑した。
「まあそりゃ国と国の相手したらそれなりのコネもカネも転がり込んでくるが、今のところはほとんど船員の確保に使ってるから流れるように消えていくんだぞ」
「そんな話酒場でするんじゃねえよ」
「拗ねんな。ほらマリアムにお土産あるからさ」
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