二度あることは三度ある
14
「太陽を背にしてまっすぐ相手に向かって飛んで!」
ハクリューが、太陽の光に眩しそうに目を細める。
その隙に瑠璃はハクリューのすぐ傍へとクロバットを近づけさせ、指貫手袋をはめた右手の人差し指と中指を合わせて横凪ぎに振った。
地上を回転するスタイラーが、呼び寄せられる。
ハクリューの額にある角の先が、ぼんやり光ったことに地上の上杉謙信は気がついた。
未知の生物の様子からモノを察知できるのは彼(彼女?)が常人と違うからなのか。
それはわからないが、とにかく謙信はハクリューの様子が今までと違うことに気がついた。
なにか、大きな力を溜めている。
標的は、瑠璃という少女。
いや、ちがう。
そして、上空を飛ぶ瑠璃の焦った表情がこちらへ向けられていることの理由を知った。
「やばい。この構えは――」
竜の狙いは――この場所一帯だ!
「“流星群”がくる!!」
角が光った。
空を仰ごうと、ハクリューはさらに天へと登る。
地上から一定距離離れたところへ登ったのが最後。
ドラゴンタイプ最強の技が、放たれる。
「上へ登らせるな!“怪しい光”!」
叩き落す勢いで、屋久はハクリューに攻撃する。
不思議な色の光がハクリューの行く手を阻む。
「やばいかもしれない!とりあえず木の影に伏せていて!!」
ざあっと、地上の人間たちがざわめく。
ただ一人を除いて。
その一人は、
「すけだちしましょう、――神陣!」
自身の固有技を、ぶっぱなしやがった。
「え、」
一瞬、視界が真っ白い空気に覆われた。
すぐに“霧払い”を指示し、瑠璃は目の前にある半分氷漬けのハクリューを確認し、
(わぉ。ナイス)
そして一言、ぼそりと言った。
「キャプチャ・オン」
いつの間にか青から金、最後に虹色の光に変わっていたラインの光がハクリューの身体をぐるぐるとぶつからないように纏わりつき囲む。
器用にそのスタイラーを操る瑠璃は、最後の一回と同時にボールを投げつけた。
淡い光が灯って、ハクリューの表情が緩くなる。
心が伝わった。
その瞬間、ボールへと2メートル強の青い蛇は吸い込まれていく。
抵抗もなく、『いつものこと』のようにそれを受け入れた。
実際いつもの事なのだ。
ボールを開いて、外へ。
外から、ボールの中へ。
戻っただけの事。
「捕獲完了。おかえり、露(ツユ)」
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