二度あることは三度ある
5
河童じゃねえよ
川に向かうと、子供が流れてきた。
・・・なんでだ。
なにこの助けやがれと言われているような天のお告げ。
「ああもうちくしょう!」
口でそうは言いながら、瑠璃は素早く行動した。
さっきまでの戦闘で使っていたロープを近くの木にしっかりと結わえ、自分の腰に反対側を繋げる。
鞄を手放すのは不安だが仕方が無いと判断して近くに置く。
ベルトを外して取っ手につけておいた。
流れに逆らってクロールするのはかなりきついが問題ない。
瑠璃は冬の川を泳ぎながら頭のすみで考える。
増水してはいるもののこの川は狭い。
水泳は得意だ。
けれど、元々橋がないから泳ごうと思って覚悟はしていたのでまだ自分は良いが、あっちの流されている子供はこの冷たい河に落ちた衝撃で心臓マヒなぞおこしてはいないよな。
そうこうしている内に、中腹まで川を泳ぎ、子供を受け止めることができた。
パニックを起して必死にしがみつかれる。
瑠璃は手早く水の中でロープに付いた金具を使って子供の身体に結わえ付けた。
かじかんだ手でそれをするのは簡単ではなかったが成功し、川岸までせっせと泳いだ。
ロープにつないだ子供を引っ張る。
岸にたどり着き、ぜえぜえと息をする。
疲れた。
地面に寝転びたかったが半分気絶した子供が水を飲んでいないか確認する。
背を叩いて水を吐かせてやれば呼吸が安定した。
よかった無事だ。
そこまで離れた所から流されたわけではないらしい。
向こう岸を見る。
大人子供が10人ぐらいこっちを凝視していた。
「河童だ!」
「真っ黒な河童だ!」
「河童がゆずきを助けた!」
「違うわボケェッッ!」
今の格好は泳ぎやすいように置いて来た上着と着流しの中に着ていたTシャツとスパッツ。
彼らが河童と言ってるのが自分だと瞬時に理解した瑠璃は疲れた声で叫んだ。
(ポケモンレンジャーだっつってもわかんねぇだろうけど、人間じゃないと言われたのは初めてだよこのやろう)
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