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二度あることは三度ある



「えーと、とにかくこれ以上あの子に手ぇ出さないで下さい。この辺にお住まいの方々のためにも」

「馴れ馴れしいと何度言ったら・・・・・・!」




(めんどくさいしこっちの言葉使うと笑いそうになるからいやなんだけど)




「・・・・・・貴殿を越後の主、上杉謙信公とお見受けして、申し上げます。私の名は瑠璃。ここにへはとある忠告を伝えに参った次第。」

「ちゅうこく、ですか。つづけなさい」





なんか悟ってらっしゃるよなこの人。

青い炎の馬にも動じないし。

瑠璃はそんな事を思ったりしながら、知る限りの丁寧な敬語で言う。





「――あの龍にこれ以上の手出しは無用でございます。あの龍の目的は破壊にあらず。こちらが手を出さなければ、この地に住む人間に危害を加えることは絶対にありません」



「ぜったいに、といえるりゆうはあるのですか?」

「在ります。」

「それは?」

「ここにいる葵尾がその証拠。彼女は絶対に人を傷つけることはありません。同じ存在であるあの龍が違うと誰が言えましょう」



青い炎の馬。

恐ろしい姿をしたその生き物は、しかし大人しく人に身体を触らせている。



「あの龍は人を殺しません。ですが、あなた方はあの龍を傷つける。それを止める為に私はここへ来たのです。」




信じてくれそうには無いなぁ。

瑠璃はそう頭の端で思ったが、それでも聴いて貰おうと言った。




「あなた方があの龍を追い出したいのなら、私は止めません。しかしそれはあの龍を傷つけずにそれを出来るのならばの話。」

「・・・・・・」

「あなた方の目的があの龍を傷つけ殺すことでなく、この地の安全だけならば、それは杞憂。この地はあの龍によって荒れたのではありません。ですからどうかこの場所から退っていただきたい。あなたが武器であの龍を傷つけるなら、私は自分の持つすべてでそれを阻止しなければならない」




龍を殺すなら、その前に私が止める。

命まではとらないが、二度とこの場所に近づかないようにしてやろう。



空白の中に込められた響きを読み取った金髪の忍は、謙信の後ろで武器を構える。

だが謙信はそれを片手で制し、他に控えていた兵士や忍者に手を出さないように言う。



あくまで穏やかに、微笑すらも浮かべながら、瑠璃に話しかけた。




「ひとつききましょう。あなたは、なぜそこまであのりゅうをまもろうとするのですか」

「・・・・・・?」



瑠璃は、何を聞いているのかと一瞬目をしばたく。

嘘を言うよりも、この人物には真実を言う方が良いと判断し、すぐに答を用意する。

そして、迷わずに言った。



「私の家族だから」










(誰よりも近くに居る、無条件に信頼し、そして慈しむべき存在だ)






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あきゅろす。
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