二度あることは三度ある
4
お届け物
無くしてしまったものは仕方がないので、新しく貝殻の鈴を首にかけてやる。
チャリン、と愛らしい音が響く。
腕の中に納まってごろごろと喉を鳴らす友紀。
ホントに猫だな。
「・・・・・・友紀ちゃん、あの人知ってる?」
『あっ、はい知ってます。風の人です』
「・・・・・・風邪の人?」
ふと見上げた木の上に、白と黒があった。
いや、白と黒の服を着た男が居た、の方が正しいか。
目元を覆う兜、背中に背負った刀を見てこりゃ堅気ではないなと推測。
ていうか見覚えあるから推測もクソも無い。
風の悪魔。
伝説の忍、風魔小太郎だ。
(まてまてまて、どうしてこんな所に居るんだなんのために)
「・・・・・・?あれって・・・貝殻の鈴・・・友紀ちゃん、結局お世話になってんじゃん、落とした物を拾ってくださったみたいだよ」
『はっ!』
すかさずぴょーんと腕から飛び出す友紀。
そしてあろう事かテレポートして風魔の胸にダイブした。
なにやってんの友紀ちゃあああぁぁん!?
≪そっ、それは落としたはずの貝殻の鈴ッ!!≫
「・・・・・・!?」
≪と、届けてくださったんですかッ!?ありがとうございますありがとうございますッ!!≫
「・・・!・・・・・・!?」
伝説が目の前に居た事には驚いたが、相手が掌の中の何かを見せていることに気が付いたのだ。
木の上に立つ風魔がだしてくる手には白いモノが乗っていた。
それが白い貝殻だと認識した瑠璃は、十中八九友紀が落とした貝殻の鈴なのだと理解した。
が、単に拾っただけなら友紀をわざわざ追っかけて渡してくれるとも思えない、そんな疑問はあるが瑠璃はまさか伝説の忍に飛びつくとは思ってもみなかった。
・・・いや、友紀は昔からこういう子だった。
≪ありがとうございます風の人っ≫
「・・・・・・!?・・・・・・!?」
紫色の猫は風魔に飛びついた挙句、その肩に乗っかってすりすり御礼だといわんばかりにほっぺたを押し付ける。
敵意が無いと分かった相手にしか懐かない友紀だが、信頼した相手にはめちゃくちゃ甘い友紀の事だ。
きっと風魔とどこかで会った事があったのだろう。
機嫌損ねてあの刀振り回されても困るんだけど。
・・・そのときはテレポートして逃げるからいいのか?
ていうかあんた自分がエスパータイプだって事忘れてない?
テレパシーが駄々漏れになってるよ。
風魔が慌ててるよ、「あ、頭の中に声がっ!?」みたいな感じで。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
あ、目があった。
・・・兜に遮られて実際の目は見えないけど多分これは助けてのサインだ。
大方瑠璃を友紀の飼い主だと思っているのだろう。
私あなたとこれが初対面なんだけどね。
しかしそのままキスしかねない友紀を引っぺがすために腕を伸ばして呼びかける。
「友紀、お礼は終わった?」
『はいっ!』
「そこの人はお世話になった人なのかい?」
『違いますよぅっ、私が助けてあげたんですっ』
「うちの子がお世話になりました、赤い髪のお方」
『聞いてくださいってばぁ!』
「うわっ」
「・・・・・・(ほっ)」
木の上から襲撃。
本日二度目。
お腹に直撃した猫を腕に戻し、瑠璃はちゃんと話を聞こうと風魔そっちのけで尋問する。
『森の中でふらふらしてた風の人を見つけたから、私がおうちに連れて帰ってあげたんですっ、偉いでしょっ』
「ご迷惑をおかけしたみたいですみません」
「・・・・・・」
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