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二度あることは三度ある
19

妥協して協力








葵尾のいうのは、こうだ。

葵尾の代わりに焔尾に乗ってもらえばいいのでは?と。



「・・・驚いたけど、それがいいかもね。葵尾鎧つけたお侍なんか乗せたことないから足を痛めるんじゃないかと心配だったし・・・」

『フルルル』

「焔尾、葵尾の言うことだけど、承諾できる?」

『・・・ブルル。』



こくり、と頷く。

肯定だろう。



「なんの話ししてんのさ」

「こっちの赤いほう・・・焔尾になら、お乗せ出来ますって話です」

「まことでござるか!」

「・・・ええ。ただ火傷をしないように準備をしてもらわなくてはいけませんけれど・・・」

「構いませぬ、某は一体何をすればよいのでしょう」

「え、マジで乗る話になってる?」




『・・・認めたわけじゃないからな。葵尾を保護していた相手を無碍に扱うわけにもいかないだけだ』

『優しい方ですよ、あの紅いお人は』





葵尾がこう言うのだから、まあ受け入れることは出来るだろう。

瑠璃は言った。






「彼らに乗るには、まず彼らについて知ってもらわなければなりません。・・・・・・この二頭の馬はギャロップという生き物です」



ギャロップの鬣は灼熱の焔だ。



「ギャロップが身体に纏うこの炎は信頼した相手には熱を感じさせないゆえ、乗ることが可能なのです」



攻撃に使う武器。

それに触れるということはなにより信頼してもらわなくてはいけない、と言うことで。









−−−−






「――お友達になってもらわなきゃならなかったんですよ」

「・・・つーかあんたも大概だよね」

「?」



そんなこんなで、真田氏には焔尾に触れさせてもらえるように信頼を勝ち取ってもらわなくてはならない。

乗せてやりたいと思っているのだからそのうちできるようになるだろう。

蹴っ飛ばすのは遠慮するようにと言っておいたし。



そんな瑠璃に佐助は言う。



「あの馬に乗る方法、教えちゃっても良かったわけ?そのまま奪って持って帰っちゃうかもしれないよ、俺たち」

「はぁ・・・・・・まあ、そのときはまた取り戻しに行けば良いだけです」



「・・・・・・舐められたもんだね」



ぞわり、と肌があわ立つ感覚が広がった。



(あ、これが殺気、か)



人間から殺気をもらうのは久々だ、と思いながら瑠璃は刃物を突きつけられた現状を見つめる。



「・・・やられて早々、簡単に何度も侵入を許せるほど甲斐の忍は甘く無いんだ。」

「・・・・・・」

「今ここであんたを殺しておくことに俺に何の障害もない。そうすればあの馬は旦那のもの。何も無かったように貰っていくよ」

「・・・・・・」



実際、この男が自分に武器を向けている時点で命を奪うことになんの躊躇も無いのだろう。

伝説級のポケモンに相対したトレーナーでもある瑠璃はそれに怯えこそしないが、それにあがらう一人の人間としてはあまりに非力。

瑠璃はそれを見越した上で言う。



「無理ですよ」

「無理?あんたには俺と戦う力があんの?」

「それこそ無理ですね。貴方のような人に実戦で勝てるなどと思いません」



自分で自分の事を優秀と言える相手だ。

しかも丸腰。

逃げることすらできるはずが無い。

悲鳴を上げる時間もないだろう。



けれど瑠璃はこれがただの脅しだと分かっている。

あの焔尾を操る瑠璃が死んだらどうなるかわからないだろうから、軽率な行動はしないだろうと踏んでいる。

だからこんなことが言えるのだ。




「あの焔尾が、私以外の人間に従うはずがない」




ぱち、と瞬きするのを見た。



それにしても、結構鋭利な殺気だ。

悪の組織のボスもこういったあからさまな殺意をぶつけてきたことは無い。

出し方なんて知らないけど。

瑠璃はじっと目の向こうを見る。



「・・・随分な物言いだね、むかつく。」

「今とさっきの言葉が気に障ったなら誤ります、ごめんなさい」

「・・・・・・」



考えてみれば、さっきの台詞は警備の甘さを嘲笑うように聞こえても仕方が無いと今更思う。

いつでも侵入できるというようにとられても文句は言えない。

そう思った瑠璃はぺこりと頭を下げる。



「軽んじたわけではありません。昨日侵入した時だって何度も失敗しましたし、二度とやりたくありません。」

「・・・・・・」

「――でも、」



ごめんなさいと面と向かって言われたのがそんなに珍しかったのか、迷彩忍者は黙ってる。



「主人の居る馬を攫って行ったりしないでしょう?真田氏は」

「・・・・・・」

「だから言っただけであってけしてあなたや真田氏を侮辱したいとおもったわけでもありません。もう一度誤ります、ごめんなさい。」







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