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二度あることは三度ある
13

潜入捜査ならぬ強奪そのに







吹き飛ばしによってかなり派手に吹っ飛んでいった迷彩忍者にご愁傷様と軽く拝んでおく瑠璃。

“吹き飛ばし”はどうしても相手より遅れてのアクションになるので、隙が出来るから使うつもりは無かった。

けれど嬉しい誤算だった。



瑠璃はクロバットにしっかりつかまって飛ぶ。

先に指示した“追い風”の効果もそろそろ切れるので早く地面に降りたい。

と、思っていたら。






「言ったでしょ、舐めてもらっちゃ困るって!」

「ッ!?」






降り立とうとした地面、その場所のピンポイントに迷彩忍者が居た。



(吹っ飛ばされる寸前に鳥から手を離していたのか・・・!)



瑠璃は自分の注意が足りなかったと一瞬焦る。

慢心しすぎた。

相手はこういったことの本職、つまりはプロだ。

自分だって潜入任務やらその逆も経験しているが、その中身の違いは水と油。

相手が一度裏をかけば崩れる機械ではなく、柔軟に状況判断をする人間だということを失念していたのだ。






「・・・・・・ッ(屋久、持ち変えるからちょっとスピード落として)」

『わかった。ヘマするなよ』




持ち変える。

今瑠璃はクロバットの後ろ羽につかまっている、というか支えられている。

これは瑠璃が飛行時にも両手を使えるようにするための策だ。

けれど今、さっさと撒かなくてはならない相手がいる。

つまりは後ろ羽に引っ掛かるのではなく、



(――それっ)



短いアイコンタクトのすぐ後、瑠璃は屋久から手を離した。

一瞬の浮遊感。

そして、また安定した支え。

スピードが上がる。



ダックスフンドより短い小さな足にぶらりと両手で垂れ下がる格好でつかまったのだ。

先ほどまで前の二枚の羽根で飛び、後ろ羽で瑠璃の身体を抱きつくような格好で支えていた屋久は本来の四枚羽で飛ぶのだから速い速い。

通常ならやらないのだが緊急事態だ。

瑠璃はみるみる引き離される向こうを見る。



優越感に浸っても良いのだが、時間を掛けすぎたと後悔。

騒ぎを聞きつけて(気配を察して、の方が適切かもしれない)集まってきたほかの人影が目的地の馬小屋に集中している。

なんてこった。







「――“影分身”」

『はいはい』





分身という数の暴力で逃げることにした瑠璃であった。

もう騒ぐ騒がないの話ではない。



分身と対峙するほかにわき目も降らず、本物の瑠璃は塀のすぐ傍に屋久を飛ばし、馬小屋まで一直線。

これならいけると思いきや、







「曲者!!」

「――なッ」






横から、いきなりなにやら活のこもった拳を頂いた。





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あきゅろす。
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