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二度あることは三度ある
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潜入捜査ならぬ強奪そのいち






『葵尾葵尾リビ葵尾リビリビリビりびりびりリビ葵尾りびりびりビ』

「焔尾が壊れたッ!?いややめてビリビリ電気伝ってる気分になるからッ」




んでもって現在お城の真上!いや普通人にはポケモンの声って聞こえないんだっけ。

念仏を唱えているかのような赤い馬の様子に冷や汗をかきつつ瑠璃はこれから忍び込む上田城の様子を見る。



ポケモンがいくら騒いでも聞き取れない鳴き声だし私が静かにすれば良いだけだ。

なら良いか。

いや良くない良くない私が集中できない。

もちろんこれから向かうのも怖いけど別の意味で怖いから。





「焔尾、どの方向?」

『月の出ているほうから葵尾の気配がする速くしろ』

「・・・屋久、配置されてる人数は分かる?」

『・・・月の方角には呼吸音が2つ、真下には足音がたくさん、反対側には6つ』

「んー・・・てことは向こうは馬小屋・・・人が少ないならいいけど・・・・・・この時間帯で起きてるのってどう考えても護衛とかそういうのだよね」



お日様と一緒に目覚めて月が出る頃に就寝する時代だもの。



「出し抜くことは考えない。すぐ行ってすぐ帰ってこよう」










羽音で気が付かれるかも知れないので、少し離れた位置に降り立つ。

はっきり言って瑠璃はこの場で素人だ。

足音を消す訓練をしたことも現役の忍の前では役に立たないと自覚はある。

身体は健康だが合戦の耐えない乱世で役に立つほどの力も持たない。



よってこの城の人間と向かい合って喧嘩をするつもりは無い。

とにかく目的地へ向かうだけだ。



瑠璃は逃げ足には自信がある。

この世界で通用するかは知らないが、ランニングシューズの後押しもある。

勝てなくても、追いかけっこぐらいはできるのだ。

それが現実になることは、避けたかったがそうはいかなかったらしいと瑠璃は心の中で呟く。





「一人で来るとか、舐められちゃー困るんだよねぇ」

「・・・・・・ッ」

「あんた、どっから来たわけ?」





現在、忍者の頭と絶賛追いかけっこ中である。



まだ武器を構えたり投げてきたりはされていないが逆に足音がしなくて恐ろしい。

ほとんど足音も気配もさせずに併走してくる迷彩忍者のおかげで馬小屋からは遠ざかるばかり。

若干イラつきながら瑠璃は空の上で待機させたままの屋久を呼ぶかどうしようかと考える。



(よし、呼ぼう。屋久に知らせて)

(んー)



腰のベルトにつけたボールのひとつ、ゲンガーが返事をする。

ちらりとその目が怪しく輝いたと思えば、すぐにクロバットが旋回してこちらへ向かってくるのが分かった。



その羽にがしっと肩をつかまれ、掻っ攫われるようにして瑠璃は一端空へ上がる。

バサッ!と羽音が一つ。

迷彩忍者は一瞬驚き、しかしすぐにどっからかでかい黒い鳥を呼んで追いかけてきた。



「・・・・・・(忍者って何でもありだな)」

「それ、始めて見る生き物だねー。あんたどこの忍?」

「・・・・・・(屋久、気が付かれない様に控えめに“追い風”をしながら月の方に飛んで)」




忍者の声を無視して、瑠璃はすぐさま耳に耳栓をつめつつ指示を出す。

“風起し”を指示したが、向こうの方のやわではないようだ。

微風程度では回避できないらしい。




「(なら・・・・・・“嫌な音”)」

『――――!!』




瑠璃は自分を支えているクロバットの足の部分をとんとんと二回叩く。

すぐさま意味を受け取った屋久による城の方にまでは届かない、だが目の前の敵には充分な効果のある音波があたりを埋め尽くした。

音波攻撃など受けたことが無さそうなこの時代の人間には充分な効果が期待できる。

そこには“超音波”ではないところは気遣いもあるのだ。

落下されても困る。

しかし意地を見せたのか、忍のほうは支えとなる鳥がぐらぐらと揺れる中、




「なっ・・・・・・このッ!!」

「ッ!」




武器を投げてきた。

暗いのではっきりとは見えないが、恐らくクナイだろうと分析する。

狙ったのは瑠璃ではなくクロバットのほうだった。

しかし、慌てずに瑠璃はこの時を待ってきたとばかりにちゃんと空気を振動させて指示を飛ばした。






「屋久、“吹き飛ばし”」








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