二度あることは三度ある
二度あることは三度ある
「チクショウまたかあああああああぁぁぁぁぁぁ!!!」
そう腹の底から叫んだ少女の名前を瑠璃という。
森林浴をしてたらなぜか山の中腹にワープしていた。
目の前には村。
しかもアスファルトもコンクリも使わない純粋な木造の建物ばかり。
・・・もうやだこの聞いてませんよなパターン。
よく見りゃこの山も立っている場所も獣道である。
補装なんぞされていない。
瑠璃はあたりを見渡す。
えーっと確か私はさっきまでポケモンの世界のジョウトのウバメの森にいたはずなんだけどあの近くにこんな植物いっぱいな山やあんな古風な村あったっけ。
首を捻る仕草をするが、分かっている。
んなもん、あそこには無い。
井戸があったりぼんぐり職人の住んでたりする村だって、ポケモンセンターやジムなどの現代的な建物がしっかり建っている。
キキョウやエンジュのあれは観光地としての演出だ。
フスベのところの山は岩山だし。
(わお、団子屋発見)
山の中腹をせっせと下りて行くと、京都のお茶屋よりも渋い素朴な家があった。
「だんご」と書かれた赤い旗がなんともシュール。
某落第忍者のアニメを思い出した。
もしくは遠い世界の自分の家の近くの山の中腹に建ってたちっさい商品店。
カキ氷器と氷を冷やす冷蔵庫が一番現代のものだったあの店。
あーあの店はどうなったんだろう。
軽い現実逃避である。
(またかよ!しかも時代まで遡ったのかよ!)
ウバメってことは時渡りのかそれともアルフの古代文字達か!?
あの村、忍者が住んでいたというチョウジに似ている気もする。
場所はジョウトのままかもしれない。
でかい寺や神社も塔も無い場所をそのままにするとも思えないし過疎化が進むにしたって不自然すぎるぐらい古さが自然な村だ。
始まりの町でだってあそこまで徹底した科学技術の阻害は目に掛かったことが無い。
タイムスリップはもう認めざるを得なさそうだ。
「・・・・・・」
おかしい、私さっきまで、なんでだ、と近くに人の目が無いのを良いことに夢遊病のような口調でぶつぶつぶつぶつ。
それにすら飽きたのか疲れたのか、ふっと目を細めてからからと乾いた笑いを喉から流す。
瑠璃は数年前まで現実世界と呼ぶべき世界にて女子高生をしていたはずなのだ。
それがどういう因果か、彼女は気に入っていたゲームの一つに放り込まれてしまった。
自分が夢を見ているという可能性を早いうちに捨てて、なぜか懐にあったゲーム内で編成していた手持ちと共にチャンピオンにまで登ったのは若家の至りだと思っている。
そして二度目はその世界で隠居しようかと思ってたらちょっとした事故にあって別地方の本編中盤に。
またかと思いつつ開き直り、傍観と介入を繰り返して頂点に立って図鑑も完成。
暇なチャンピオンの仕事に休暇をもらってカントーに戻り、ジョウトに観光へ行ったはずなのだが、そこで三度目のトリップ。
我ながら破天荒な人生経験である。
ふうー、とため息。
動きが止まったかと思えば、崩れ落ちるように瑠璃はその場にぺたりと腰を下ろした。
「・・・さっきからポケモン一匹も見かけないんだけど」
不安である。
そんな嫌な予感を払拭したくて、瑠璃は手持ちの鞄を見る。
トレーナーカードはちゃんとある。
ポケナビは電池切れだが電気ポケモンに充電してもらおう。
図鑑はちゃんと動く。
と、手が止まる。
前方に生き物を見つけた。
図鑑を翳す。
反応しない。
「ポケモン以外に向けないで下さい」の表示が出る。
鳥だ。
鷹。
ポケモンほどではないが、大きな鷹。
ポケモンではない、生き物。
今度は自分の懐へ手をやった。
首に掛けた転送マシン付きポケナビも動く。
最後に、腰に手をかける。
ボールは一個二個・・・・・・
(足りねぇェェェ!!)
またかよぉ!と心の中で叫ぶ。
またはぐれた。
鞄を掻き分ける。
いくつかボールが減ってる。
我が愛獣エモンガに強力アタッカーアブソル秘伝ハクリュー兄弟色違いギャロップ!
確信した。
この世界、ポケモンの世界と違う。
時代も違うから自分の元の世界でもないらしい。
そして口元に笑いを浮かべた瑠璃は冒頭に戻る。
頭を抱えて心の底から叫んだ。
「ちくしょおおおおおおおぉぉぉぉぉぉッッ!!!」
***二度あることは三度ある***
(タイムスリップ付き異世界旅行)
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