二度あることは三度ある
10
興味津々
ところであの尻尾や足にある炎は藁に引火しないのだろうかと佐助は本気で首を捻ってみる。
確かに熱は感じるのに、どうやら害はないらしい。
その脇で水を掛けたらどうなるのだろうかとも思ってみるが、実行は止めておこうと思う。
「何度見ても、きっれーな馬だねぇ」
「そうだな。妖だろうと、きれいなものはきれいだ」
一定の距離に近づいたので、ぴくりと青い馬はこちらに顔を向ける。
その頭には角。
あれで突き刺されたらどうなるのだろうか。
「怖くない。俺たちはお前になにも害を与えない。だから怖がらないでくれ」
『・・・・・・』
「俺の名前は幸村。こっちは佐助だ」
「ちょっと旦那?馬に人間の言葉分かると思ってんの?」
「そんな事は無い。だがこの数日で分かったがこの馬はとても賢いぞ」
「?」
「どうもこちらの言葉を理解しているらしいのだ。」
「ふーん?」
「こちらが動かなければ何もしない。こちらが安全だと言うと、何もしなくなる。今だって、これだけ近づいても何もしてこない」
「へぇ・・・・・・?」
『・・・・・・』
言われて、佐助はもう一度馬の顔をじっと見た。
最初に見たときは灰色に近い青と思ったが、よく見ると青と銀色をした瞳がそこにある。
知性のありそうな綺麗な瞳は、警戒心がずっと薄まっている気がするので主人の言うこともあながち間違いではないらしい。
「そういや、名前は付けないの?」
「名前・・・この馬にか?」
「そうだよ、ここで飼うなら名前ぐらい要るんじゃないの」
「うーん・・・それも考えたぞ。何度も」
「そうだったの?」
「しかし、嫌がるのだ。」
「?何が」
「この馬だ。アオというのはどうだ、と言ってみたのだが、ブンブン首を振ったのだ。・・・ほら、こんな風に」
主人が指差すほうを見ると、アオと呼ばれた青い馬が青い炎を撒き散らしながら首を横に振るのだ。
人間が、違う違う、と言っているように明らかな拒否を示している。
「なんか、本当に言葉を理解してるっぽいねー・・・妖だからいいのか?」
「俺は、なにかこいつには別の名前があるのではないかと思っているのだがな」
「ふうん?別の名前ねぇ」
それなら、こいつには一体どんな名前があるのだろうか。
ふと手を伸ばす。
撫でさせてはくれない、が怖がっているだけのようだ。
『・・・・・・』
こちらを窺う仕草をする青い馬。
くん、と鼻先をひくつかせるので好きにさせてやることにした。
が、次のこの馬の行動に飛びあがることになる。
カッと目を見開かせた馬は佐助の左腕目掛けて、
「うおあッ!!?」
「な!なんだ!?どうした何をした佐助ッ!?」
「知らないよ!」
「じゃあなんでこの馬は佐助に噛み付きかけてるんだ!さっきまで大人しかったのに!」
「噛み付きかけてるんじゃなくて噛んでるんだって!服!伸びる!って破れた!?」
ビリビリィ!と音を立てて裂ける佐助の服の左腕。
二の腕までざっくりと破れてしまった。
そして破れた布の切れ端は馬の元にあり、しきりにくんくん匂いを嗅がれている。
馬の方は布を前足で押さえて離さない。
佐助はそれを見、剥き出しになった左腕をさすりながら言う。
「え、なに?こんだけ騒いでも何の反応もないし」
「佐助の服になにか気になる匂いがあったのだろうか?」
「えー・・・・・・?」
『瑠璃さんの匂いだ近くに居るんだ焔尾さん瑠璃さん瑠璃さん瑠璃さん会いたいです寂しいです私はここですー!』
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