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二度あることは三度ある


摩訶不思議







「只今戻りましたよーっと」

「おお、佐助帰ったか」



先ほどまで瑠璃と話をしていた男、猿飛佐助は赤い鉢巻きをした青年の元に現れる。

それに気が付き、声を掛けるのは話にも上がった彼の団子好きな主人。

赤い鉢巻きをしたその青年の名前は真田幸村。

名のある武将で一所では鬼とか虎とか呼ばれているがかなりの初心で純情で性格は燃えるというか暑苦しいのだが今はそれはいい。

それより今は、と佐助は戻り頭に言う。






「旦那ー?なんでまた馬屋にいんの。しかも服とかあっちこち焦げてるし、何度目?」

「うーむ、どうにもあの馬は警戒心が強い上に臆病らしいぞ。」



あの馬、という単語にひくりと佐助は半ば叫ぶように抗議し始めた。



「聞いてるのはそうじゃなくて。何度も言ったでしょ、近寄って蹴り飛ばされるのも火傷するのもアホらしいからあの馬にかまうのも止めろって!」

「うむ・・・・・・しかし、近づかなくては危険がないことも分からないし、心を開いてはもらえないだろう?」

「いやいや開いてどうすんの!まさか乗る気!?」

「当然だ」



最初は叱られてしょぼんとしたがすぐにきりっと若いのに男前な顔をする主人に若干脱力。

しかしココで引き下がってはいけない。

この主人はやると言ったらやってしまうのだ。



「あのぼうぼう燃えてる背中に乗ったらどうなると思ってんの!?」

「それぐらいで俺は諦めん!」

「諦めて!焼肉になるよ!」





話にある馬について説明しようと思う。

端的に言えば、妖の類にしか見えない灰色っぽい青色の炎を纏った大きな馬だ。



馬を最初に見つけたのは佐助その人であり、めちゃくちゃ吃驚したのだがその辺は省く。

とにかく主人に近づけてはいけないと追い払おうとしたところに件のこの主人がタイミング悪くやってきて、馬を見て驚いたはいいが佐助に捕らえよと命令。

抗議しようにも命令なので逆らえずに必死こいて捕獲に成功したわけだ。

それも無傷で捕らえてみせた。

炎を身体に纏った馬なんぞとの戦い方など知るはずも無い中それをやってのけた優秀な彼を誰か誉めて欲しい。



「あんまり暴れさせたらうっかりあの炎が馬屋に燃え移っちゃうかもしれないでしょ!捕まえるの大変だったんだからね!」

「必ずや俺はあの馬を乗りこなしてみせる!」

「竜の旦那みたいなことにこだわらなくていいから!お願いだから止めて!」

「む・・・・・・」



主人は少しばかり何かを考え、しかしすぐに佐助に向き直って言った。



「だが佐助、あの馬は最初会った時よりは大人しくなったぞ?」

「はぁ?」

「見たほうが早い、来い!」

「はああぁぁ!?ちょっと旦那ぁ!?」





一瞬気を抜き、すると主人に腕を捕まれ馬屋に引っ張っていかれる佐助がいた。

どこにそんな体力あるのさ旦那。








そして、馬屋の入り口。

そろりそろりと件の馬を驚かせないように足音を忍ばせて進む二人組。



「静かにするのだぞ佐助」

「分かってますよー」



佐助は忍なので足音を消すなど造作もないが、相手は動物、それも妖なので気配を消しても分かってしまうだろうと早々に諦めた。



「ほら見ろ。緊張が解けた様子だ」

「んー・・・まあ、たしかに」



足を折り、小屋の隅で座り込んでいる一頭の馬をしげしげと見る。

見るのは何度目かなのだが、目を引かれる馬だ。

もちろんそのけったいな容姿もそうだが、良い扱いを受けた馬でのほかに類を見ないほどたくましくしなやかな足腰やその身体の立派さはこれこそ名馬と主張している。

本来馬は大抵立ちっぱなしなのだが、あの馬は座っているほうが良いらしく、他の馬とは離れた場所で座っている。






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