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二度あることは三度ある


宣戦布告といきますか








「あー、さっきの?」

「ん?」

「さっきの団子屋で50本買って行った人ですよね。奇遇ですね」



驚いた顔をする男。

こんなもの瑠璃にとって造作も無い。

レンジャー修行では潜入捜査や変装術もいろいろやったし。

警戒心を見せないように警戒してくる相手に説明してやる。



「耳の形ですよ。人間の耳の形は個人で別ですから」

「え、そうなの?」

「観察するのが癖でして」



本来の姿を見ていなかった限りは変装を見破れなかっただろう。

もう少し言うと、声でも大体は分かる。

いくら声色を変えても声紋は変わらないし。



首だけ後ろに向けているのが疲れたので、いったん手元に目をやる。

ミルクが沸騰していた。



慌てて飯盒を横に置いて、火を消すためにあらかじめ用意していた水を焚き火にぶっ掛ける。

そしてぽいぽいと餅を追加投入。

いいにおい。



「すごい団子の量でしたけど、お客さんがたくさんいらっしゃっていたんですか?」

「あー、いや、食べるのは主人一人だけど」

「大食いなご主人ですね」



こいつの言う主人って、真田のだよね。

そうは思うが瑠璃は興味ない振りをしてお椀に汁をよそう。



「お使いの途中だったんですね」

「やー、せっかくいつもより遠いところに買いに行ったのに売り切れてたときはがくっときたね」

「あれ、それはすみませんでした。」



一口飲み、味見。

うん、良い出来。



「そっちこそ、横取りしちゃったけど良かったの?」

「こっちの餅が本命でしたし、お気になさらず。どうぞ」

「あ、どうも」



匙と一緒に餅入り汁が入ったを手渡したら受け取ってくれた。

口に付けようとはしないけど。



「これ、何?」

「牛乳です」

「・・・・・・」

「牛の乳を飲んだら牛になるなんて迷信ですよ」



熱々のそれをゆっくり飲む。

やっぱり美味しい。

あそこの店は当たりだった。



「あんた、旅の人?」

「ん?まあ、そうですね。」

「なにしにこの国に?」

「・・・・・・あー、探してるものがあったので、ここにあるっぽいから遠路はるばる?」



尋問されている気分だ。

実際そうなんだろうけどな。

瑠璃は大して気に止めずに餅を口にはこぶ。



「遠路って、どっから?」

「海のむこうです。」

「ってことは九州?四国?」

「・・・・・・カントーです」

「関東?」



もういいや。

汁を最後まで飲み干す。



しばらくして、相手がそっと汁を飲み始めた。

「・・・うまい」って呟いたのでちょっと驚いた瑠璃。



「なんかすっごいなめらかな甘さが美味しいんだけど」

「あの団子屋さんの腕が確かって事ですね。」

「何使ってるの?」

「ですから、牛乳です」



あ、でも保存はきかないなぁ。

最後まであっさり飲み干した相手の男はもう一度美味しかったと一言。



「美味しかったなら、良かったです。」

「ところで探しているものって、なに?よければ力になるよ」

「それは・・・」

「俺様城に仕えてたりするから、結構役に立つと思うよ?で、どんなもの?」

「んー、言葉で表現するのは難しいですね」



協力ねぇ。

優しさだと思えないのが辛い。

水筒に入ったお茶を飲む。



「お気になさらず。大体の手掛かりはつかんでいますから」

「そうなの?」

「ええ。ですから――」







はた、と。

瑠璃は目を見開いた後、空になったお椀を落とした。

コロンと転がるお椀を拾おうとする男のその腕をがっちりと捕らえる。



その腕には、探していたこだわりスカーフ。



(ダウジングマシンの音量設定消音にしたまんまだった!)



もういい、直に聞こうと決意する。

瑠璃は相手に詰め寄った。






「これ・・・この白い布、どこで手に入れたんですか?」

「え?」

「なんで(こいつが持っているんだ?自分のもののように)・・・まさか(落とした?奪われた?)・・・いやそんなはずは・・・・・・」

「えーっと、」

「これ、どこで手に入れたんですか」

「・・・貰いました」

「誰から」

「知り合いから・・・・・・」






嘘だ。

カンだが、はっきり分かる。



葵尾が本当に落としたかは分からない。

けれど、こいつは、葵尾の事を知っている。

瑠璃はすでに確信していた。

青い炎の馬から貰いました奪いました、なんて言える筈が無いように、そこを知り合いなんて言葉で濁す必要は無いはずだ。



「お気になさらずとは言いましたが、お願いします、それを貰えませんか」

「え、えー・・・いいけど」

「本当ですか!」



相手が忍者ということで話を繋げられないかもしれなかったが、押しに押せばと思い、詰め寄ればOKをもらえた。

なので遠慮なく結び付けているスカーフを奪い取る。

少々乱暴になったが知らん。

いまはこのスカーフだ。

唖然とする男の前でスカーフを首に巻いた。

そして風呂敷に手を突っ込んで朝に貰った酒の入った瓢箪を男に押し付ける。





「これ、貰ってください。お礼とお詫びです。あなたのご主人とでも飲んでください」




お礼とはスカーフと情報。

謝罪とは、スカーフを無理に頂くこととこれからの事について。



どうもありがとうございましたと言い残して、瑠璃は荷物を担いで繋いでいた馬のところへ走った。







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