リコリス
003
それは寒い冬の日の事だった。
−−−−
「――で。いろいろと覚悟を決めてきた私の立場が無くなる、この光景は一体なんですか」
「皆さん親切なんですよ」
木枯らしが吹く中。
しっかりと火鉢と火の付いた炭にあたりながら、そんなに間を挟まない再会を果たした2人はそんな話をしていた。
確か私は投獄者との面会権を得るために幕府に仕えている弟にいろいろと頼んだりして、一応いろんな努力の後にここに来れたのだけれど。
しかしたしかに、この人が不当な逮捕にじっとしているはずも理不尽な投獄生活を大人しく感受するはずも無かったわけである。
前情報を集める途中で、なんとかという新人看守が投獄者と友情を深めただとか、荒くれ者の罪人たちを暴力の一つも使わずに統率した男がいるだとか、牢屋一つにもなんやなんやあるらしいことは分かってはいたが。
「じゃあ20分です、ごゆっくり」
「ありがとうございます。お仕事がんばって下さいね」
「見張っておかなくて良いの看守さん!?」
「積もる話ぐらいあるでしょうよ」
「ありがとうございます」
「えええーー・・・・・・」
そういや漫画にもそんな話あったな、なんかおやつのプリンを貢がれまくってた話。
ふとそんなこと思い出すと笑うしかなくなってくる。
あははおかしいな。
格子を隔てた男2人は笑いあった。
「この格子が防弾ガラスではないあたりこの刑務所は天人の技術導入がなさそうだなーとは思っていましたが、ここまで古風とは思いませんでしたね」
「おかげで良くしてもらっていますよ。罪が軽い者や冤罪の者同士だと案外話もできますし」
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