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リコリス
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波の音と潮風、これぞ日本の海だと言わんばかりに空と地平線を覆い尽くす一面の青色。

真っ白な入道雲に鳥の影を数えていた銀時は、ふと、この青色の境界線は宇宙のどこの星でも見ることが出来るわけではないのだと灰色の頭をした先生の友人が言っていたなあと思い出す。

そもそも地球のように水が豊富な星はそうそうお目にかかれない特別なものらしい。

一面岩に覆われでこぼこだらけで火を噴く程度が普通なのだとか。

そんな場所に一体どうやって生活しているのだろうとまだ見た事のない地球外生物を想像するが、面倒になってやめた。



「だから人間の身体は浮くようにできてねーんだよ」

「できるって練習すれば」

「練習したって出来ねーもんは出来ねーよ、俺はここでおめーらがばしゃばしゃ遊んでるとこ見ててやるから俺の事は気にせずはしゃいで来い」

「三十路のおっさんかてめぇは。いいから行くぞほら頑張って犬かきぐらいは習得して見せろ」

「そうだぞ銀時おれたちは水の中で魚になるんだ」

「俺もお前も水かきやらヒレなんかもついてねーしエラ呼吸もできねーの!いかねーったらいかねー!」

「あーめんどくせえ、じゃあ浮き輪に掴まって浮いてろとりあえず水に慣れろ」



突然の海水浴だが、それでも村から近場の砂浜はそう遠い訳でもなかったためにその日のうちにそれぞれのお宅の許可は下りたらしい。

松陽の養い子である銀時は強制参加だが、他の塾生たちは自主参加だったのに、白波の世話している焚火(バーベキューというらしい)の周りにはそれなりの人数が集っていた。

例にも漏れず空気の読めないロン毛や先生に付きまとうチビも一緒だ。

特に、心配性の親に海なんて危ないから行っちゃいけませんとかって言われるだろう所をどう説得したのか、見張り役の下男をつけて送り出してもらったのだ、このぼんぼんは!



「銀時君は、泳ぎは得意でないのですか?」

「まず初めに水を怖がってしまうんですよねえ」



そんな事をマイペースな大人は言っている。

やかましい誰が怖いもんか、ただあれだ人が生きていく上で泳ぐ必要性なんてもの無いから、生来の面倒くさがり屋である俺は無駄な事をしたくないのだ。



「そうだ、銀時。これから私は他の子たちと遊んでくるから、その間に白波さんに泳ぎを教えてもらいなさい」

「「えっ」」

「目指せ塾内一番」

「「えっ」」

「銀時を頼みますね白波さん」

「ちょっとまってそれ台詞かぶってる」


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