桜
1
緑の光が闇と一緒に目の前を覆う。
何も見えないのがどうしようもなく怖かった。
助けて、と言おうとしたが
唇も、喉も動かない。
なにかに引っ張られて尻餅をつき、
同時にその何かが
覆いかぶさってくるような感覚がした。
恐怖と悪寒が交じり合って
いやだ、というよりも先に感じたのはそれに対する拒否だった。
『(来るな!!)』
その瞬間、
[何か]がびくっと震えた気がした。
それと同時に
燃えるように真っ赤な光が瞬く。
目を開けてそれを確かめる前に力の限界を感じ、
火の中にいるような錯覚と共に
ゆっくりと倒れこんだ。
『(・・・誰?)』
このまえの雄鹿か、それとも・・・、そう思い、振り返った。
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