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昼食の後、雹はハグリットの小屋を目指して芝生を進んでいた。

本当はこの授業を休んでこの後始まる東洋魔術の準備をしても良いのだが第一回目ぐらいは出席するべきだと思った結果だ。

それに、傷害事件の可能性を捨てておくわけにも行かない。









教科書の開け方から始まる授業も大概だ。

背表紙を撫でて大人しくさせた分厚い本を開いた雹は、ヒッポグリフを見てあとさずる生徒たちを気だるく見ていた。



「まんず、イッチ番先にヒッポグリフについて知らなければなんねぇことは、こいつらは誇り高い」



ひそひそと悪巧みをしているマルフォイに牽制のつもりでガンを飛ばしてみた。

気が付いてない。



繋がれているのが気に喰わないヒッポグリフたちはばさばさと翼を動かす。

一番乗りを申し出たハリーがその中の一頭、ビッグバークと対面する。

そっとお辞儀する。

決闘のときとはまた違うこわごわしたお辞儀のポーズだ。



「あー、よーし、下がれ、ハリー」



お辞儀を返してくれないビックバークがハリーの首を引っかくのが心配なハグリットが言う。

そのとき、ビックバークがするんとお辞儀した。

成功だ。



「やったぞ、ハリー」



ハグリットがくちばしを撫でてやれとハリーに促す。

数回なでられるうちに、ビックバークは気持ち良さそうに目を閉じた。



パチパチと拍手。

スリザリンもしている。

ハグリットはハリーをビックバークの背中に乗せて飛ばした。

いきなりのことだったので皆唖然としていたが歓声を上げて上を見る。

ビックバークはぐるっと空中を一周しておりてきた。







「よーくやったぞ、ハリー!」



「すごいわ、ハリー!」

「怖くなかった?」





こわごわ放牧場に他の生徒たちが入ってくる。



「よーし、他にもやってみたいモンはおるか?」



ハグリットは一頭ずつヒッポグリフの首輪を外し、生徒の前に立たせる。

雹は朝に見かけた黒いので練習を始めた。




じっと目を合わせ、それからお辞儀。

ころりとお辞儀を返してくれた。

嬉しかったのでくちばしを優しくなでてやる。

わあ、かわいい。

4メートルもある翼が怖いけど、愛嬌があって愛らしいしぐさをするヒッポグリフに雹は目を細めた。



「こいつの名前は、クロックだ。」

『クロック。』



ハグリットから教えられた名前を呼ぶ雹。

するとクロックは誇り高いっていうか甘えん坊にしか見えない態度で嘴を撫でる手に擦り寄ってきた。



『なんか、カイにクイみたいだな、おまえ』



ご存知風の谷の。

学校の図書室にもある漫画の中でもすばらしく面白いと思うあれだ。

カラスみたいな黒色で、ダチョウみたいな謎の生き物。

そういや卵から生まれたのって名前あったっけ?

3年経ってるし、記憶も薄れている。



嬉しそうに別のヒッポグリフのほうへむかうハグリットを見送り、雹はクロックに話しかける。

雪獅子とも仲良くなれそうだ。



『クロック、クロック。私は雹だ。よろしく』

「キューァッ」



(わ。鳴いた)



驚いたが、可愛らしい鳴き声だ。

あー、ハグリット近くに居ないけど背中に乗せてやるって言ってる気がする。

乗ってみたい。



そう思ってたら、後ろでマルフォイがビックバークにお辞儀しているのが視界の端に写った。

あ、お辞儀返された。



「簡単じゃないか」



もったいぶってビックバークの嘴をなでるマルフォイ。

雹の頭の中に、この先がありありと浮かぶ。



(黙っていればいいものを)



「そうだろう?醜いデカブツの野獣君」

『黙れ』



案の定、怒ったビックバークが鉤爪を振りかざす。

その凶器が腕を裂く前に、雹はすぐさまマルフォイの口を押さえて後ろへ引っ張った。

あ、助けちゃった。

頭の端で冷静な自分がのんきなことを考えるうちに、スルーモーションのように空振りしたビックバークの爪は地面を抉る。



ドッ、という地面の振動と生徒たちの悲鳴。

一瞬で辺りが動揺する中、ハグリットが慌ててビックバークを取り押さえようと駆け寄る。

雹は二度目が来る前に顔を強張らせたマルフォイを力任せに引く。

間に合わない。

二度目の攻撃が雹の肩を狙った。



(あ、まずい)



――ザクッ!!







黒が飛び散った。






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あきゅろす。
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