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『グリムについては、別に気にしないで居る方が良いと思うな。だがこれは占い学がいい加減だと言う意味ではない』



背表紙の新しい本を鞄から取り出しつつ、言う。

授業で訊ねるように、ハーマイオニーに語りかける。



『たとえば、だ。お前の目の前には分かれ道があって、占い師がお前に「右へ進むと危険であると真実が告げています」と言ったら、お前は右へ進むか?左へ進むか?』





「・・・・・・」

『占いを信じていなくても、右へ進もうと思わなくなるだろう?そしてお前は左の道を進み、安全に歩みを終えるわけだ。』

「けど、本当に右へ進んだら危険だったかなんて分からないじゃない」

『そうだな。占いに出た「右に進んだ」という仮定の未来での出来事は左へ進んだ瞬間「無かったもの」となったわけだから。』

「そうよ、身体が二つあるわけでもないし、左を進んでも危険はあったかもしれないわ」

『けれど、右側で起きる危険と左側で起こる危険のどちらがより危険かなど誰にも分からないだろう?』



顔をしかめるハーマイオニー。

雹は涼しい顔で難しいことを言う。



『そもそも歴史的にも占いがどういった条件でどのくらいの確立で真実となるのかが微妙であることから、占いが信じられることは少ない。』



雹は最後のオレンジジュースを飲み干して、言い始めた。






『例え話だ。

・・・・・・ある男が「一週間、川に近付いたら不幸になる」と言われ、家から出ずに一週間を過ごした。その後友達にそれを話すと馬鹿にされたんだと笑われた。

・・・・・・この話を聞いて、どう思う?』



「馬鹿だと思うわ。不幸なんて起きたかどうかも分からないじゃない」



あくまで現実的なことを言うハーマイオニー。

ロンはうーんとうなってる。

マグル生まれと生まれも育ちも魔法世界ではこう違うものなのか。



『そうだな、わからない。川に行かなかったんだから、川に行ったらどうなっていたかなんて分からない。』

「やっぱりインチキじゃない」

『じゃあ、インチキなんて疑いを被らないように占い師は「お前は不幸になる」とだけ言っておくべきだったか?何も言うべきではなかったか?』

「・・・?」



ハーマイオニーは首をかしげる。



『では、占い師はなぜ男に予言をしたと思う?』

「・・・怖がらせるため?」

『そうかもしれない。しかし金も取らないのに何のために言う?金を請求して、その後川に近づくなと言っても良いだろう』

「・・・・・・うーん・・・・・・」





ますます唸りだしたハーマイオニーにやれやれと肩をすくめる雹。



『じゃあ、数占いの授業を終えた後の宿題にしておくか?』

「――数占い!」



バッ!と顔を上げたハーマイオニーが唐突に叫ぶ。

そして慌てて鞄をひっつかみ、



「ごめんなさい用事を思い出したわ!」



ぽかんとそれを見送るロンたちを置いていった。








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