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杖の先から、白い煙が渦を巻いて吸魂鬼に向かっていった。

いや、白というよりは水銀のような色だ。



似通っているのに、吸魂鬼のその手の色とはまったく別の色の煙。

煙が蛇のように細いひも状に姿を変え、ぐるりと吸魂鬼を一周する。



ブルブル震えたかと思うと、吸魂鬼は素早い動きで隣のコンパートメントへ移っていった。



(まずい、退散させきれなかった!)



このままでは隣のコンパートメント・・・最終車両から二番目の、恐らくあの三人組と新任教師の収まっているところへ向かっていかれる。

ハリーの体調が心配だ。

二匹の雪獅子を肩に乗せ、たっと横の廊下に飛び出る雹。



『!』



最悪なことに、隣のコンパートメントの扉が開いていた。

吸魂鬼自身が開けたのだろう、すうっと開くドアの向こうを凝視している。



光をつける余裕のあった人物が居たらしい。

多分ルーピンの魔法だ。

コンパートメントのなかを白い炎が照らしている。



吸魂鬼がぐるりと頭を動かして――コンパートメントの入り口へ入っていった。




(待て、それ以上入るな!)



廊下を挟んで見えたのは、







ずる、と。

黒髪の眼鏡の少年が座席からずり落ちる瞬間だった。



「ハリー!」



悲鳴。

ボロ臭いローブの男性がその少年を背に隠すように、扉と吸魂鬼を隔てて立ったのが見えた。

リーマス・ルーピン。

まだまだ若いというのに、鳶色の髪には白髪が混じってる。

秘密を隠すため、ずっと気苦労が絶えなかったんだろう。

頭の隅でそんな事を考えた。




(脱狼薬を完成してから死ぬべきだったなぁ・・・≪サクラ≫は)



まあ、あの状況ではああするしかなかったのだ。

彼らにとってのサクラは死んだのだから。

あの日、シリウス・ブラックが投獄された日に。



幸いなことに、ルーピンはこちらに気が付いていなった。

そりゃ、ディメンターの後ろに誰か居るなど気にかけないだろう。





「シリウス・ブラックをマントの下に匿っているものは誰も居ない。去れ」





おお、凛々しい。

草臥れて病んでいるような風貌だが、あれでもDADAの教授だ。

吸魂鬼も追い返されるだろう、と安心した。






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