桜 5 気分は最悪。 しかしそれを言葉に出せないのがなんとも面倒なことだ。 (これまで生きてきて、まさか自分が血を吐くとは思わなかった・・・・・) 今回の闇の魔術に対する防衛術はちょっとしたスプラッタだった。 ハリーと似たようなことになったというか。 ムーディが雹にさせようとしたのはどうやらホグワーツの校歌を大声で歌うことだったらしいのだが、歌おうとする体を無理矢理意思の力で止めていたので喉を傷めてしまったのだ。 おかげで舌や喉の粘膜はては肺やらに負荷がかかり、咥内が裂けた。 「桜花!大丈夫!?」 「血!・・・・・うーん・・・」 生徒達が心配したり倒れたりと騒いでいる。 言ってしまえば見た目は体調不良で吐血、だが実際は内出血のようなものだ。 もちろん普通の内出血とは違いかなり痛いのだが。 喉って意外と神経通っているのね、なんて事を考えながら血の塊を全部吐き出す。 今日の授業、ちゃんと喋れるかな? そんな事を考えた。 −−−− 授業中に吐血しようと仕事も宿題も免除はされない。 なにせあと一週間もすればボーバトンとダームストラングの代表団がやってくるのだから、やることは山ほどあるのだ。 (それに、どっかの保護者がハリーと面会させろと煩いし・・・・・・) 実の所、ホグワーツにだってPTAらしいものはあるにはある。 まあその実態は貴族社会や魔法界の事情も含んだフクロウ経由の連絡網みたいな簡素なものだが。 その定期的な報告は教師に回ってくるので、雹と生徒の保護者達との繋がりはわずかながらも存在していた。 学生と教師を兼任するというところが保護者から見ると不安があるのだろうと思うが、フクロウ便が届くことは人より多い。 二年経った今はそれも少なくなったはずなのだが、今度は生徒に一番近くで生活している教師だとかなんだとか、親も知らないような人間関係に突っ込んだ相談事が届いたこともある。 偏見かもしれないが、迷惑な保護者(モンスターペアレント)の対応は校長とか学年主任とかの仕事では?とは思う。 (はー・・・・・・) まあそれはいいとして。 雹はこのところ煩い保護者その1に出す手紙の内容を考えていた。 [dear シリウス・ブラック] 貴方からの手紙にあった最近のホグワーツのようすですが・・・・・・ ハリーは闇も魔術に対する防衛術の授業で、服従の呪文にみごと・・・・・ 一週間後には他校の代表団が・・・・・・ そこまで書き出して、雹は私何やってんだろうとと羽ペンを放り投げた。 ぶっちゃけ、あの黒犬には付き合っていられない。 彼との関係は単にハリーを通じて知り合っただけの仲だ。 やり取りもほぼ手紙一つだし、必要以上に仲良くなったつもりはない。 (もうやーめた。宿題しよう) [*前へ][次へ#] [戻る] |